人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

小説から表現、描写を学ぶ

森晶麿さんのかぜまち美術館の謎便りの表現、描写

かぜまち美術館の謎便り(新潮文庫nex) 作者:森晶麿 新潮社 Amazon 木洩れ日のような柔らかな微笑み。 カオリも遅れてイチジクを口にする。 すっとした鼻に抜ける爽やかな感覚と、口内いっぱいに広がる濃厚な甘さが両立している。 「シナモンですね?」 「…

名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係の表現、描写

ペンギン鉄道 なくしもの係 作者:名取佐和子 幻冬舎 Amazon 殺し屋稼業の似合いそうな鋭い目が糸のように細くなって垂れ、嬉しそうに顔をかがやかせた。犬なら間違いなく尻尾を振っているだろう。 「大学はどうしているんだ?」 潤平の問いに、鈴江の目が泳…

柚木麻子さんのあまからカルテットの表現、描写

あまからカルテット 作者:柚木麻子 文藝春秋 Amazon 琥珀色のハイボールを挟んで、雪子さんと満里子はじっと見つめ合う。お互いの瞳の奥にあるものを読み取るかのように、目を逸らそうとしない。 満里子は、険しい表情を浮かべていた。息が荒く、傷んだ髪が…

原田マハさんの翔ぶ少女の表現、描写

([は]9-1)翔ぶ少女 (ポプラ文庫) 作者:マハ, 原田 ポプラ社 Amazon がれきの向こうに、炎が迫りくる。もうもうと黒い煙を上げながら、怪物のようにのたうつ炎。 こらえ切れないように、祐也先生はうつむいた。苦々しい表情で、それっきり、黙り込んだ。 よど…

浅田次郎さんのハッピー・リタイアメントの表現、描写

ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫) 作者:浅田 次郎 幻冬舎 Amazon <もしもし、慎ちゃん。ベンさんも一緒かしら> いつもは色気のある立花葵のアルトが、不穏なソプラノに変わっていた。 何と言い返してよいものか、声は思い付くはしから喉元で凍りついて…

横山秀夫さんのルパンの消息の表現、描写

ルパンの消息 (光文社文庫) 作者:横山 秀夫 光文社 Amazon 肩を波立たせていた橘が、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。 その谷川の無策が、もう限界近くまで擦り切れてしまっている寺尾の神経を尖った爪で掻き回した。 そこまで言うと寺尾は、ゼン…

柚木麻子さんの本屋さんのダイアナの表現、描写

本屋さんのダイアナ (新潮文庫) 作者:麻子, 柚木 新潮社 Amazon 身体の柔らかい部分が次々に切り裂かれたように痛み、彩子は上手く息ができない。 ティアラの作ってくれた水割りはちょうど良いバランスで、きんと冷たく、するすると面白いように喉をすべり落…

東野圭吾さんの宿命の表現、描写

宿命 (講談社文庫) 作者:東野 圭吾 講談社 Amazon 美佐子が振り返ると、澄江の顔は蝋のように白く変わっていた。 園子は唇をとがらせて紅茶の湯気を飛ばすと、熱そうに啜った。 勇作たちの目的の学舎は、学生たちが行き来するメインストリートからは、かなり…

有川浩さんのシアター2!の表現、描写

シアター!〈2〉 (メディアワークス文庫) 作者:有川 浩 アスキーメディアワークス Amazon 石丸に声をかけた千歳の視線が、そのままふと後ろへ滑った。 大して起伏が豊かな体でもないくせに、堂々としているだけインストラクター風のコスプレがはまっている。 …

三上延さんの江ノ島西浦写真館の表現、描写

江ノ島西浦写真館 (光文社文庫) 作者:延, 三上 光文社 Amazon 「……あ、あんな言い方しなくても、よかったんじゃないでしょうか」 口からつるりと文句が洩れた。 繭の声は細かったが、強い糸のように途切れがなかった。 『なにやったんだよ、お前』 ちりっと…

浅田次郎さんの地下鉄に乗っての表現、描写

地下鉄に乗って 新装版 (講談社文庫) 作者:浅田次郎 講談社 Amazon しかしそれは、まるで目醒めの床の夢のように、思いたどるそばから遠ざかって行くのだった。 意味もわからぬまま、岡村の象のような目が見る間に潤んだ。 <> 母に揺り起こされたとたん、真…

村田沙耶香さんのコンビニ人間の表現、描写

コンビニ人間 (文春文庫) 作者:村田 沙耶香 文藝春秋 Amazon 白羽さんはガリガリに痩せているので、ズボンが下がってしまうのだろう、白いシャツからうっすらとサスペンダーが透けている。腕をみても、骨にぺったり皮膚が貼りついているようで、この狭そうな…

原田マハさんのキネマの神様の表現、描写

キネマの神様 (文春文庫) 作者:原田 マハ 文藝春秋 Amazon 清音は、湖面のように澄んだ瞳で父をみつめた。そして、そっと右手を差し出した。 重苦しいコートをすっかり脱ぎ捨てて、どの顔も春風にほころんでいる。 おだやかな陽光が、水面でやわらかに伸び縮…

浅田次郎さんのおもかげの表現、描写

おもかげ (講談社文庫) 作者:浅田次郎 講談社 Amazon 「名前は、何ていうのかね」 電灯を背にして影絵になった男の顔を見上げ、峰子はきっぱりと答えた。 小鳥の囀ずりがかすかに聞こえる。壁や天井に青みがさしてきた。二万何千回もくり返された、僕の夜明…

小川糸さんのキラキラ共和国の表現、描写

キラキラ共和国 (幻冬舎文庫) 作者:小川 糸 幻冬舎 Amazon もう雪も雨も降っていなかった。色褪せた黄色いカナリアのような色の空が広がっている。 女性は、陽だまりでまどろむ猫のような表情を浮かべながら、両手で軽く抱きしめるようにコップを包み、京番…

三上延さんのビブリア古書堂の事件手帖2の表現、描写

ビブリア古書堂の事件手帖(2) ~栞子さんと謎めく日常~ (角川つばさ文庫) 作者:三上 延 KADOKAWA Amazon 俺が黙ってうなずくと、長い黒髪が渦を巻くほど激しく首を横に振った。 「ま、まさか、わたしにそんな……そんなバカな……」 ドアを出る前に「光代姉さん」…

東野圭吾さんの嘘をもうひとつだけの表現、描写

嘘をもうひとつだけ (講談社文庫) 作者:東野 圭吾 講談社 Amazon 日は沈みかけても、地面の発する熱量にはあまり変化がないようだった。 胸に衝動がこみあげてきた。それは忽(たちま)ち彼の涙腺を刺激した。しかし彼は懸命に涙をこらえた。 間もなく美枝子は…

乃南アサさんの未練の表現、描写

乃南アサさんの未練より 添田の、眼鏡の奥の小さな目が、一瞬、四角く見開かれた。彼は、震えるような息を大きく吸い込むと、「知世っ」と怒鳴りながら、リビングを出ていってしまった。 添田の喉仏が大きく上下している。貴子は、思わずさとかを抱く腕に力…

浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)の表現、描写

鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫) 作者:浅田次郎 集英社 Amazon 鉄道員(ぽっぽや) [DVD] 高倉健 Amazon 迷いこむような感じで古い団地の敷地内に入った。年代相応に立派な銀杏の木が、古ぼけた四階建てのアパート群の足元に、乾いた落葉を敷きつめている。 …

七月隆文さんのぼくは明日、昨日のきみとデートするの表現、描写

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫) 作者:七月隆文 宝島社 Amazon ぼくを映す瞳が光って、透明な雫を落とす。 真っ黒になったテレビが呼吸のような間合いで静まりかえり、部屋の空気がしんと落ち着く。 彼女が背伸びする。 背中をしなやかに曲…

原田マハさんの暗幕のゲルニカの表現、描写

暗幕のゲルニカ(新潮文庫) 作者:原田マハ 新潮社 Amazon 会場は凪いだ海のようだった。その海に向かって深呼吸する思いで、瑶子は言葉をついだ。 見知らぬ肖像画を見つめるうちに、ドラの口もとに苦い笑いがさざ波のように寄せてきた。 ドラが誘えば抱いて…

小説から表現、描写を学ぶ。坂木司さんのウインター・ホリデーより

ウィンター・ホリデー (文春文庫) 作者:坂木 司 文藝春秋 Amazon 「だろうな。あいつは優しい奴だし」 俺がうなずくと、鞭のような声が飛んで来た。 「わかったようなこと、言わないで」 どこもかしこも、塗りつぶしたように真っ白。しかも目の前には、まだ…

浅田次郎さんの日輪の遺産より表現、描写を学ぶ

日輪の遺産 (角川書店単行本) 作者:浅田 次郎 KADOKAWA Amazon 日輪の遺産 [DVD] 堺雅人 Amazon 工兵隊長の唇はわなわなと震えていた。ようやくそれだけを言うと、隊長は総司令官の前であることも忘れたように、水筒の水を音をたてて飲んだ。 荒れ果てた工場…

原田マハさんの奇跡の人の表現、描写

奇跡の人 The Miracle Worker (双葉文庫) 作者:原田 マハ 双葉社 Amazon 清々しく晴れ渡った夏の空が、青ひと色をたたえて広がっている。 日が高く昇るにつれ、セミの声が響き始める。最初はしみじみとした音色で、やがて大音量となって、屋敷の中をも満たす…

坂木司さんの僕と先生の表現、描写

先生と僕 (双葉文庫) 作者:坂木司 双葉社 Amazon 「これ、ステーキ肉なんだって。今日の最高級食材らしいよ」 ほどよく焼けた厚みのある肉。僕はちょっと感動しながら、それにかぶりつく。ほどよい脂っこさと、焼いたトマトの酸味。そこにきつめの塩が効いて…

原田マハさんの異邦人(いりびと)の表現、描写

異邦人(いりびと) (PHP文芸文庫) 作者:原田 マハ PHP研究所 Amazon せわしなく視線を巡らせて、弔問客の中に菜穂の姿を探した。 菜穂をあなたと結婚させたのがそもそもの間違いだったと、言葉の刃で一輝をめった刺しにした。 克子は憔悴しきって帰ってきた。…

原田マハさんの生きるぼくらの表現、描写

生きるぼくら (徳間文庫) 作者:原田 マハ 徳間書店 Amazon 「あの子は……おれの、大切な人です」 つぼみの瞳が、風に触れた湖面のように揺らめいた。人生は、もう一言、つけ足した。 「おれの、大切な家族です」 つぼみは、止めていた息を放った。その途端、…

東野圭吾さんの聖女の救済の表現、描写

聖女の救済 (文春文庫) 作者:東野 圭吾 文藝春秋 Amazon 薫は顎を引き、綾音の様子を見つめた。美貌の容疑者は、目を伏せ、唇を結んだ。まだかすかに笑みを残してはいたが、彼女を包む優雅な気配は、日が沈むようにゆっくりと翳りを見せ始めていた。 「どこ…

坂木司さんのワーキング・ホリデーの表現、描写

ワーキング・ホリデー (文春文庫) 作者:坂木 司 文藝春秋 Amazon 聞きたいことは山ほどある。話したいことだっててんこ盛りだ。けど、俺は心の筋肉で無理やり口をつぐんだ。 「ケンカでもしたの?」 さらりとコブちゃんがたずねる。 「まあ、そんなとこです…

薬丸岳さんの闇の底の表現、描写

闇の底 (講談社文庫) 作者:薬丸岳 講談社 Amazon 男は公衆電話ボックスに入った。 ボックスの中からあたりを見回した。辺鄙な町の公園には人の姿はなかった。午後五時を過ぎた公園は陽が陰り始めて、錆びついた滑り台がもの悲しそうに佇んでいる。 「ひぃぃ…