人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

小説の書き出しを学ぶ

凪良ゆうさんの流浪の月の書き出し

流浪の月 (創元文芸文庫) 作者:凪良 ゆう 東京創元社 Amazon 休日のファミリーレストランは混んでいる。はしゃぐ子供とそれを叱る親、学生のグループたちの騒々しい笑い声に満ちた店内を、ホールスタッフが忙しなく行き来している。 「フレッシュピーチとホ…

中山七里さんのさよならドビュッシーの書き出し

さよならドビュッシー (宝島社文庫) 作者:中山七里 宝島社 Amazon 銀盤にそっと指を置く。 右足は軽くペダルに乗せる。 深呼吸を一つしてから指を走らせ始める。 低音から始まる序奏。そして和音からしなやかな三度の重音に移った時、早速鬼塚先生の叱責が飛…

東野圭吾さんのレイクサイドの書き出し

レイクサイド (文春文庫) 作者:東野 圭吾 文藝春秋 Amazon 汚れた綿のような雲が前方の空に浮かんでいた。雲の隙間には鮮やかな青色が見える。 並木俊介は左手をハンドルから離し、右肩を揉んだ。さらにハンドルを持つ手を替え、左肩を揉む。最後に首を左右…

古内一絵さんのキネマトグラフィカの書き出し

キネマトグラフィカ (創元文芸文庫 LA ふ 1-1) 作者:古内 一絵 東京創元社 Amazon 文庫本から眼を上げると、車窓の向こうに、まだ雪が残る山並みが迫っていた。 北野咲子は、軽く伸びをして窓枠にもたれる。 時間通りの到着になりそうだ。 久々に全員が顔を…

中山七里さんの死にゆく者の祈りの書き出し

死にゆく者の祈り(新潮文庫) 作者:中山七里 新潮社 Amazon 教誨室(きょうかいしつ)の中はひどく寒々しかった。 四方の白を基調とした壁には何の飾りもなく、天井の照明が無機質な光を放っている。調度と呼べるものは中央に置かれたテーブルと一対の椅子の…

小坂流加さんの余命10年の書き出し

余命10年 (文芸社文庫NEO) 作者:小坂 流加 文芸社 Amazon ゆらゆらと街は陽炎(かげろう)で揺れている。 林立するビルの窓は灯台のように明滅している。すれ違う電車の残像が光を引いていく。雑踏の先から路地裏へ駆け回る子どもたちはコンサートの上に点滅す…

田中経一さんのラストレシピの書き出し

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 (幻冬舎文庫) 作者:田中 経一 幻冬舎 Amazon 二〇一四年(平成二十六年)、四月 華僑の大物ともなると、その葬儀はここまで大袈裟になるのか……。 佐々木充は、そんな感想を持ちながら記帳を済ませた。 今年は、四月に入ってから雨…

中井由梨子さんの20歳のソウルの書き出し

20歳のソウル (幻冬舎文庫) 作者:中井 由梨子 幻冬舎 Amazon 満員の千葉マリンスタジアム。 浅野大義がヒロアキとともに応援席に向かうと、サングラスをかけた高橋健一先生が「よお」と片手をあげた。 トロンボーンは最前列。大義はその列の端に愛用の「ロナ…

中山七里さんのヒポクラテスの誓いの書き出し

ヒポクラテスの誓い 法医学ミステリー「ヒポクラテス」 (祥伝社文庫) 作者:中山七里 祥伝社 Amazon 「あなた、死体はお好き?」 真琴はそう訊かれて返事に窮した。 十一月の薄日が差し込む法医学教室で、挨拶も交わさないうちの第一問がこれだった。しかも目…

瀬尾まいこさんのそして、バトンは渡されたの書き出し

そして、バトンは渡された (文春文庫) 作者:瀬尾 まいこ 文藝春秋 Amazon 何を作ろうか。気持ちのいいからりとした秋の朝。早くから意気込んで台所へ向かったものの、献立が浮かばない。 人生の一大事を控えているんだから、ここはかつ丼かな。いや、勝負を…

平野啓一郎さんのある男の書き出し

ある男 (コルク) 作者:平野啓一郎 コルク Amazon この物語の主人公は、私がここしばらく、親しみを込めて「城戸さん」と呼んできた人物である。苗字に「さん」をつけただけなので、親しみも何も、一般的な呼び方だが、私の引っかかりは、すぐに理解してもら…

中山七里さんの護れなかった者たちへの書き出し

護られなかった者たちへ 作者:中山 七里 NHK出版 Amazon 壁時計が午後七時を過ぎる頃、ちょうど最後の未決書類が片付いた。三雲忠勝は机の上の書類一切合財を自分用に割り振られたキャビネットに収めると、施錠した上で扉が閉まっていることを確認した。慎重…

東野圭吾さんの沈黙のパレードの書き出し

沈黙のパレード (文春文庫 ひ 13-13) 作者:東野 圭吾 文藝春秋 Amazon 壁の時計を見ると、あと二十分ほどで午後十時になろうとしていた。今夜はここまでかな、と並木祐太郎は思った。厨房からカウンター越しに店内の様子を窺った。残っているのは、中年女性…

名取佐和子さんのペンギン鉄道 なくしもの係の書き出し

ペンギン鉄道 なくしもの係 作者:名取佐和子 幻冬舎 Amazon いーち、にー、さーん、しー、ごー、……とゆっくり十まで数えてから、笹生響子は文庫本から目をあげた。 「やっぱり、いる」 思わず口に出してつぶやいてしまう。 クーラーがほどよく効いた電車の中…

柚木麻子さんのあまからカルテットの書き出し

あまからカルテット 作者:柚木麻子 文藝春秋 Amazon 男の人としゃべったのは六年ぶりだ。 咲子は気が付き、目を見張る。いやいや、出会いの少ない仕事とはいえ、異性と接する機会がまったくないとは言えない。例えば、ピアノを習いにくる小学生の中にも男の…

原田マハさんの翔ぶ少女の書き出し

([は]9-1)翔ぶ少女 (ポプラ文庫) 作者:マハ, 原田 ポプラ社 Amazon ええにおいや。あまくて、やさしい、やわらかぁなにおいや。 バターと、クリーム。おさとうに、バニラ。あまい、あまい、きゅうーっとなるほどあまぁい、すごーく、ええにおい。 これは、あ…

浅田次郎さんのハッピー・リタイアメントの書き出し

ハッピー・リタイアメント (幻冬舎文庫) 作者:浅田 次郎 幻冬舎 Amazon 油蝉の声が絶えたと思う間に時雨がやってきて暑気をころあいに鎮め、かわりに蜩(ひぐらし)の鳴き始めた晩夏のたそがれどきであったと思う。 いや、地球温暖化とやらで蝉も時雨も出番に…

横山秀夫さんのルパンの消息の書き出し

ルパンの消息 (光文社文庫) 作者:横山 秀夫 光文社 Amazon 平成二年十二月八日夜、巣鴨ー 「おーい、お嬢ォ、事件現場じゃ用足しはどうしてるんだ」 よく通る野太い声が宴席を突っ切り、こっそりトイレから戻った若い女性記者の背中をつかまえた。 「やっ?」…

柚木麻子さんの本屋のダイアナの書き出し

本屋さんのダイアナ (新潮文庫) 作者:麻子, 柚木 新潮社 Amazon 新しい教室の窓際の席からは、空のプールがよく見える。昨日まで降り続いた雨のせいで、うっすらと底に水がたまり、その上には校庭から吹き飛ばされてきた桜の花びらがふかふかと積もっていた…

東野圭吾さんの夜明けの街での書き出し

夜明けの街で (角川文庫) 作者:東野 圭吾 KADOKAWA Amazon 不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。妻と子供を愛しているなら、それで十分じゃないか。ちょっとした出来心でつまみ食いをして、それが元で、せっかく築き上げた家庭を壊してしまうなんて愚の骨頂…

小説の書き出し 柚木裕子さんの最後の証人より

最後の証人 「佐方貞人」シリーズ (角川文庫) 作者:柚月裕子 KADOKAWA Amazon 緑色のワインボトルが、床に落ちた。 半分ほど残っていた中身が、瓶の口から波打って溢れ出す。毛足の長いグレーの絨毯に、赤い染みが広がる。 床にはワインボトルのほかに、肉片…

沢木冬吾さんの償いの椅子の書き出し

沢木冬吾さんの償いの椅子の書き出し 灰色の煙突から流れ出る淡い煙が、晴朗な空に霧散していく。 錦繍に包まれた小径を、能見亮司は進んでいった。喪服の人々とすれ違う。みなの踏みしめる枯れ葉の快いさざめきが、耳をくすぐった。 玄関付近に喪服の男女が…

小説の書き出し 垣谷美雨さんの夫の墓には入りませんより

垣谷美雨さんの夫の墓には入りませんより どうして悲しくないんだろう。 夫が死んだというのに、何の感情も湧いてこない。 それどころか、祭壇に飾られた遺影を見つめるうちに、まるで知らない人のように思えてくる。 遺影の周りには、たくさんの菊が飾られ…

小説を読もう「償い 矢口敦子」

「償い 矢口敦子」の表現償い (幻冬舎文庫)posted with ヨメレバ矢口 敦子 幻冬舎 2003-06-01 AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo ebookjapan 書き出しそのころ、男は羽をもがれた蝿のように地べたを這いずりまわっていた。 埼玉県光市、新宿から東部線の快速…

小説を読もう「父からの手紙 小杉健治」

「父からの手紙 小杉健治」の表現父からの手紙 (光文社文庫)posted with ヨメレバ小杉 健治 光文社 2006-03-14 AmazonKindle楽天ブックス楽天kobo ebookjapan 書き出し今年も誕生日に手紙が届いた。 二十四歳、おめでとう。美しい女性に成長した君が私にはと…

小説の書き出し「仮面同窓会 雫井脩介」

「仮面同窓会 雫井脩介」の書き出しをここに残しています。 十年近く経った今でも思い出す。 西に傾いた日に照らされてアスファルトが黄色く光っている。 白いウェアに身を包んだテニス部員たちが連なって軽快に走り抜けていく。 その向こうにあるグラウンド…

小説の書き出しが難しい 田中経一さんのラストレシピ

ラストレシピ 麒麟の舌の記憶 田中経一 華僑(かきょう)の大物ともなると、その葬儀はここまで大袈裟になるのか……。 佐々木充は、そんな感想を持ちながら記帳を済ませた。 今年は、四月に入ってから雨空の日が続いている。この日も、横浜郊外にある斎場にはし…

小説の書き出しが難しい 「火花 又吉直樹」

小説を書きたいと思ってもなかなか難しい。特に書き出しがうまく決まらないで悩んでしまう。 人気のある小説は引き込まれていくような書き出しで憧れる。 いつか自分もそんな引き込まれるような小説を書けるようになりたいと思い、私が気に入った小説の書き…

小説の書き出しが難しい 「旅路を死神 伊坂幸太郎」

書き出しがうまく決まらないで悩んでしまう。 人気のある小説は引き込まれていくような書き出しに憧れるが いつか自分もそんな引き込まれるような小説を書けるようになりたいと思い、私が気に入った小説の書き出しをここに残しています。 死神の精度 伊坂幸…

13階段(高野和明)の書き出し

死神は、午前九時にやってくる。 樹原亮は一度だけ、その足音を聞いたことがある。 最初に耳にしたのは、鉄扉を押し開ける重低音だった。その地響きのような空気の震動が止むと、舎房全体の雰囲気が一変していた。地獄への扉が開かれ、身じろぎすらも許され…