男は公衆電話ボックスに入った。
ボックスの中からあたりを見回した。辺鄙な町の公園には人の姿はなかった。午後五時を過ぎた公園は陽が陰り始めて、錆びついた滑り台がもの悲しそうに佇んでいる。
「ひぃぃ」
悲鳴を発した安達に、振り返った捜査員たちの白い視線が突き刺さった。
テレビ画面に映像が映し出されると、村上は息を呑んだ。
記憶の引き出しにしまったはずの映像が、また網膜に、蘇ってきたのだ。
アイランドヒルズは鉄筋三階建ての賃貸マンションだった。名前からは想像できない寂れた外観だ。外壁は剥げ落ちていて、ひびが蜘蛛の巣のように走っている。
しばらく上がっていくと、左手にゴルフの打ちっぱなし練習場の明かりが見えた。その先は街頭の少ない薄暗い道が続き、奥には鬱蒼と生い茂った雑木林が広がっている。雑木林の手前にはなだらかな台地に造成された住宅街があり、加奈の自宅も住宅街の一角にあった。
左手に団地が見えてきた。団地の窓からはいくつかの明かりが漏れている。団地の一角にある公園に人の姿はない。数本の街灯がブランコや砂場を寂しく照らしている。