真ん中で分けたまっすぐな黒髪に縁取られて、小さな顔は白い花のようだった。その花がほころんで、笑っている。潤んだ大きな目、すっと通った鼻と、ふっくらとした唇。やや浮き出た頬は、うっすらと紅をさして明るんでいる。 原田マハさんのカフーを待ちわび…

歩道に立ち遠くに視線を向けた目は、長いまつげに縁取られ、憂いを帯びているように見える。通った鼻梁と薄い唇は、見る者に怜悧な印象を与えるが、顔立ちからは隠しようのない気品が漂っている。 柚月裕子さんの合理的にあり得ないより

ベージュのパンツスーツに身を包み、小ぶりのボストンバッグを手にしている。長いまつ毛が切れ長の目に陰を落とし、形のいい唇は微かに笑みを湛(たた)えている。日本人形のように整った顔立ちだった。腰まであるストレートの黒髪が、東洋的な神秘さを醸し出…

もうひとつの席に女が座っていた。見たところ五十代半ばか。歳に似合わない真っ赤な口紅をつけ、贅肉をため込んだ身体を、サイズの合わない事務服で包んでいる。 柚月裕子さんの凶犬の眼より

宗彦たちのほかに、水穂の知らない女が一人いた。モノトーンのスーツを着た若い女だった。若いといっても、三十は過ぎているだろう。プロポーションを誇示するように、背筋を伸ばし胸をはっている。ややつり上がり気味の目と、すっと通った鼻筋は、すました…

平板な顔のなかにこぢんまりと納まっている小さな目鼻や、気弱に見える眉の下がり具合が、家出人捜索願の書類に添付された本人写真とそっくりだ。 柚月裕子さんの孤狼の血より

歳のころは四十そこそこか。見ようによっては三十代前半でも通りそうだ。黒い髪を結い上げピンで留めている。肌が白く、項(うなじ）が綺麗だった。 柚月裕子さんの孤狼の血より

陶器のような肌に、くっきりとした眉や大きくて切れ長の目がバランスよく並んでいる。瞬きすると濃い睫が目元で震えた。 東野圭吾さんの眠りの森より

肩に手を置かれて振り返った。形の良い唇がまず目に飛び込んでくる。中国美人を連想させる少し吊り上がった目が、拓也の顔を見つめていた。黒い喪服を着ていると、墨絵から抜けだしてきたようだ。 東野圭吾さんのブルータスの心臓より

私が彼を殺した (講談社文庫) 作者:東野 圭吾 講談社 Amazon 彼女はレインコートを奇麗に畳み、横に置いた段ボール箱に入れようとしているところだった。光沢のある長い髪が、彼女の横顔を半分ほど隠していた。

いっちみち乃南アサ短編傑作選 (新潮文庫) 作者:乃南 アサ 新潮社 Amazon 彼女は目を閉じたまま、白い喉を見せて心持ち顎を上げている。

「お待ちどおさん。ぼう、お腹空いたじゃろう」 ピンク色のエプロンをして、頬骨の張った菱形の顔をした女が、にんまりと笑った。翔人は返事する代わりに、ただ曖昧に笑ってみせた。 乃南アサさんのしゃぼん玉

芳原亜矢子は、きっぱりとした口調でいった。力強い目に形の良い眉、鼻筋の通った顔を見て、凛とした美人とはこういう人のことをいうんだろうな、と松宮はこの局面に全くふさわしくないことを思った。 東野圭吾さんの希望の糸

安西さんがきたのは七時を三十分ほど回ったころだった。二十代半ばの彼女は八歳の娘を持つシングルマザーで、昼間は運送会社の仕分けパートをしているそうだ。明るい茶色に染められた長い髪は根元が少し黒くなっていて、それをパレッタでひとまとめにしてい…

ゆるいパーマのかかった長めの髪には、少しだけ白髪が混じっている。四十代の後半くらいだろうか。色白で、きれいな顔立ちをした女性だった。 森沢明夫さんのおいしくて泣くときより

二十代半ばの細面の女だ。目と鼻と口が、顔の真ん中で小さくまとまっている。黒と茶色が混じった髪はアップして、白いカチューシャで留めている。 葉桜の季節に君を想うということより

いま目の前にいる彼女はというと、胸元を露出させたサテンの服を着て、わずかに覗いたブラジャーは黒く、唇は毒々しいほど赤く、長い睫はおそらくつけ睫で、そこに目やにのようにぽってりとマスカラを載せ、爪は長く伸ばし、パールの入った赤いマニュキュア…

この時、わが妹は都立三田高校の二年生。現在の彼女とはまるで違い、髪は日本人形のような漆黒のストレート、服装も白いブラウスに紺のスカートで、化粧気もピアスの穴もなく、いたって地味なたたずまいをしていた。 葉桜の季節に君を想うということより

顔は小ぶりで卵形、額は広く、眉は細くきりっとしている。茶色の描き眉だ。 葉桜の季節に君を想うということより

さらに彼女はチェスをしている二人のほうを向き、深々と頭を下げた。「どうもお邪魔してすみませんでした」長い髪がノースリーブで剥き出しになった肩を覆った。 東野圭吾さんのレイクサイドより

色白でふっくらとした指に、指輪の跡はない。化粧気のない肌には薄茶色の染みが浮き、ひっつめの髪も白いものが交じっている。 古内一絵さんのキネマトグラフィカより

卵に切り込みを入れたような地味な顔が、どうしてあんなに妖艶に見えたのかは分からない。 古内一絵さんのキネマトグラフィカより

ふと、経理にいる三十過ぎの独身女性の顔が浮かんだ。丸顔に、切り込みを入れたような一重目蓋の地味な顔立ちの人だった。質の悪い男性社員たちは彼女のことを陰で「こけし」と呼んでいる。 古内一絵さんのキネマトグラフィカより

アイボリーのハーフコートに、たっぷりしたオパールグリーンのロングスカート。 元々百七十センチを超える長身に加え、ピンヒールを履いているため、ショートボブの頭頂がドア枠につかえそうだ。 古内一絵さんのキネマトグラフィカより

アイボリーのワンピースの上に、フェイクファーつきのふわふわとしたコートを纏っている様は、縫いぐるみのようだ。 古内一絵さんのキネマトグラフィカより

砂浜を春菜が走っていた。水着の上から白いTシャツを着ていた。手に提げているビニール袋の中身は缶ビールだ。髪が潮風になびき、小麦色の肌には夏の日差しが照りつけていた。 東野圭吾さんの使命と魂のリミットより

ドアが開き、白衣姿の若い女性が顔を覗かせた。二十代半ばといったところか。髪を後ろで束ねているせいか、目が少し吊り上がり気味だ。 東野圭吾さんの使命と魂のリミットより

髪の根元が白いので染めているのが一目瞭然だが、それでなくても目尻の皺や肌艶のなさで老いが垣間見える。 中山七里さんの死にゆく者の祈りより

細面に長い髪。セーターとパンツの上からでも華奢と分かる体型。着物でも着せれば楚々とした大和撫子で通る美人だった。 中山七里さんの死にゆく者の祈りより

車椅子には、素材はシルクだろうか、薄いピンク色のブラウスを着た老女が腰かけていた。目鼻立ちのいい顔、髪は染めているのだろう、白髪は見当たらない。佐々木の予想通り品のいい女性。彼女が山形幸その人に間違いないだろう。 田中経一さんのラストレシピ…