2022-06-05から1日間の記事一覧
二十代半ばの細面の女だ。目と鼻と口が、顔の真ん中で小さくまとまっている。黒と茶色が混じった髪はアップして、白いカチューシャで留めている。 葉桜の季節に君を想うということより
雲が切れて丸い月が頷く。雲が流れて月が隠れる。空は最前からずっとそんな調子で、白んだり深い灰色になったりと、落ち着きがない。 葉桜の季節に君を想うということより
いま目の前にいる彼女はというと、胸元を露出させたサテンの服を着て、わずかに覗いたブラジャーは黒く、唇は毒々しいほど赤く、長い睫はおそらくつけ睫で、そこに目やにのようにぽってりとマスカラを載せ、爪は長く伸ばし、パールの入った赤いマニュキュア…
この町の多くの家は、昔ながらの黒い板壁や欞子(れんじ)窓を持っており、玄関先の松の枝ぶりもよく、そういう宿場町のような家並みの間を歩いていると遠い昔が偲ばれ、今なお伝統とともにあるこの地の人たちをうらやましく思う。 葉桜の季節に君を想うとい…
くまのプーさんのカバーオールを着た子が畳の上にちょこんと座っている。柔らかそうな髪にはくりんくりんとウェーブがかかり、頬はリンゴのように赤い。目は、何かに驚いているかのようにまん丸に見開かれている。 葉桜の季節に君を想うということより