しばらくすると人の気配がして、珠暖簾のあいだから、腰の曲がった年配の女性が顔を出した。八十近くだろうか。老女は大上の姿を認めると、皺に囲まれた垂れ気味の目尻を、一段と下げた。 柚月裕子さんの孤狼の血より
大上は顎を引くと、底光りする目で宙を睨んだ。 柚月裕子さんの孤狼の血より
平板な顔のなかにこぢんまりと納まっている小さな目鼻や、気弱に見える眉の下がり具合が、家出人捜索願の書類に添付された本人写真とそっくりだ。 柚月裕子さんの孤狼の血より
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