人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

小説から表現、描写を学ぶ

東野圭吾さんの夢幻花の表現、描写

【第26回柴田錬三郎賞受賞作】 夢幻花(むげんばな) (PHP文芸文庫) 作者:東野 圭吾 PHP研究所 Amazon 早瀬は椅子の背もたれに身体を預けた。目の奥が鈍く痛み、首筋は強張っている。両腕を大きく上に伸ばすと、つい唸り声が漏れてしまった。 誰もいないと思っ…

小杉健治さんの冤罪の表現、描写

小杉健治さんの冤罪より 「あの女性じゃないですか」 西田が入口に目をやって言った。 曽根も顔を向けた。艶やかな女が店内を見回している。他の客の視線がその女に集まった。すらりとした体つきで、目鼻だちも整っている。髪を結い上げ、細いうなじを際立た…

小川糸さんのにじいろガーデンの表現、描写

にじいろガーデン (集英社文庫) 作者:小川 糸 集英社 Amazon その花びらを、ママはそっと手のひらに包むと静かにカカの頭の上にのせ、思いっきり八重歯を見せてニッとほほ笑む。 水の中では、母さんと千代子さんが歓声を上げながらふざけていた。地元の子供…

塩田武士さんの「罪の声」の表現、描写

罪の声 (講談社文庫) 作者:塩田武士 講談社 Amazon 弱った歯茎から歯が抜けるようにビルや店が消えていった。そんな中「テーラー曽根」は時代の波に乗ることも荒波に揉まれることもなく、振り子のリズムで時を刻んだ。 照明を点けた後、すぐ隣に掛けられてい…

小説から学ぶ表現、描写 朝井リョウさんのもういちど生まれるより

もういちど生まれる 作者:朝井リョウ 幻冬舎 Amazon 椿と飲んだことがそんなにも嬉しかったのか、と思うと、胸の奥の裏側から何かがどろりと溶け出してきそうな気持ちになる。 今回の振付けを初めて見たとき、背中の毛穴が開いて、悪い予感がたっぷりと溶け…

小説から学ぶ表現、描写 辻村深月さんのゼロ、ハチ、ゼロ、ナナより

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫) 作者:辻村深月 講談社 Amazon 「わかりません」 途端、添田が顔を上げ、それまでには見られなかった意志を持った視線が私を見た。背筋が伸びる。 彼女の好みのど真中とはずれるのかもしれないが、攻撃性の感じられな…

小説から学ぶ表現、描写を学ぶ 朝井リョウさんの世にも奇妙な君物語

世にも奇妙な君物語 (講談社文庫) 作者:朝井リョウ 講談社 Amazon 五人の瞳は、戸惑い、不安、ほんの少しの昂揚、様々な感情が混ざり合ったような色をしている。 そんな十の視線に全身を貫かれるようにしながら、淳平は、唐突に思った。 ー 今、俺、めちゃく…

小説から学ぶ表現、描写 柚木裕子さんの最後の証人より

最後の証人 「佐方貞人」シリーズ (角川文庫) 作者:柚月裕子 KADOKAWA Amazon 「被告人に懲役十五年の求刑をいたします」 報道関係者数人が、傍聴席から立ち上がり外に飛び出す。 真生は佐方を視界の隅で見た。佐方は腕を組んだまま俯いていた。 「以上です…

表現、描写をおすすめ小説から学ぶ 伊坂幸太郎さんのバイバイ、ブラックバードより

バイバイ、ブラックバード<新装版> バイバイ、ブラックバード<新装版> (双葉文庫) 作者:伊坂幸太郎 双葉社 Amazon ざる蕎麦を食べ終えて店の外に出ると、白く細かい綿のようなものが、止めどなく天から落ちてきた。視界を埋めてくるその、ふわふわとしたもの…

小説から学ぶ表現、描写 小川糸さんの食堂かたつむりより

食堂かたつむり (ポプラ文庫) 作者:小川糸,石坂しづか ポプラ社 Amazon そしてふと我に返って窓の外を見やったら、もうすでに夕方になっていた。夕陽に照らされて、一瞬、景色のすべてがマーマレードたっぷり塗ったような表情になる。 雪に埋もれたなだらか…

表現、描写をおすすめ小説から学ぶ

志駕 晃さんのスマホを落としただけなのにより それは午前中の静かなネットカフェには、ちょっとうるさすぎる音だった。男は慌てて鞄を抱えて、エレベーターホールまで移動する。同時に鞄の中から泣き叫ぶスマホを取り出して着信ボタンを押そうとしたが、見…

おすすめ小説から表現、描写を学ぶ 坂木司さんの和菓子のアンより

和菓子のアン (光文社文庫) 作者:坂木 司 光文社 Amazon ブランドものの化粧品コーナーには、きっちりメイクをした綺麗なお姉さんが、マネキンのように立って硬質な笑顔を振りまいている。

おすすめ小説から学ぶ表現、描写 東野圭吾さんの手紙より

手紙 (文春文庫) 作者:東野 圭吾 文藝春秋 Amazon しかし直貴は答えられなかった。唇を噛み、孝文を睨みつけていた。 「誰だい、それ」孝文は直貴の視線をはねのけて訊いてきた。「武島、と名字が一緒だということは、かなり近い親戚と考えていいのかな。あ…

小説から学ぶ表現、描写 雫井脩介さんの検察側の罪人より

雫井脩介さんの検察側の罪人より 「『週刊平日』ですが、ちょっとお訊きしたいことがありまして、お時間いただけませんか?」 最上は挑発的にも見える薄い笑みを顔に貼りつかせたその男を怪訝に見やった。歩みを緩めたところに、彼は名刺を掲げながら近づい…

小説から学ぶ表現、描写 垣谷美雨さんの結婚相手は抽選でより

垣谷美雨さんの結婚相手は抽選でより 夕陽はゆるゆると沈み、空と海との境い目に近づいた瞬間、水平線が金色に光った。そして、あっという間に沈むと、視界すべてが群青色に変わる。 自分の相手は、隣に座っている女性? 思わず隣の女性の横顔を盗み見る。く…

表現、描写を学ぶ 山崎豊子さんの沈まぬ太陽 アフリカ篇 下より

山崎豊子さんの 沈まぬ太陽 アフリカ篇 下より 恩地は、税関吏に近寄り、 「先程は、騒ぎを起こしてすまなかった、私の荷物を受け取りに来ました」 と云うと、検査台に残っている荷物を眼で指した。 桧山は、恩地の掌に手を委ね、じっと顔を見上げたかと思う…

おすすめ小説から表現、描写を学ぶ 山崎豊子さんの沈まぬ太陽より

山崎豊子さんの沈まぬ太陽より 日頃は、人を下目に見て、威張っているその人物が、想像もできない腰の低さで挨拶した。 高く澄みきった空に、鱗雲が浮かび、秋風がたつ季節になった。 山崎豊子さんの沈まぬ太陽より 薄暗い空の彼方に、ぽつんと紅い点のよう…

おすすめ小説から表現、描写を学ぶ 垣谷美雨さんのリセットより

垣谷美雨さんのリセットより 小柄で大きな目がくるくると動くところが、小動物を連想させる。社内では中高年のアイドル的存在だった。 国道に面した店は、トラックの激しい往来のせいで、排気ガスや粉塵にまみれて、うっすらと粉をふいたようになっている。…

小説から学ぶ表現、描写 ビブリア古書堂の事件手帖より

三上延さんのビブリア古書堂の事件手帖より 「退院、おめでとうございます」 とりあえずそう口にした。 「……ありがとう、ございます」 彼女はうつむいたまま言った。お互い話の接ぎ穂を失って、沈黙が流れた。 大通りに足を踏み入れた。また残暑がぶり返して…

おすすめ小説から表現、描写を学ぶ 垣谷美雨さんの農ガール、農ライフ

垣谷美雨さんの農ガール、農ライフより 「いいところだね。空気がきれい」と、ヒトミは鼻孔を膨らませて深呼吸した。 もとは和室だったのを洋風に改築したのだろう。書院造りの床の間はそのままだが、床はフローリングにしてあり、中央部分だけ薄緑色の絨毯…

おすすめ小説から表現、描写を学ぶ 堂場瞬一さんの高速の罠より

堂場瞬一さんの高速の罠より 深井の顔に暗い影が過る。何かミスをしたのか、怯えているようだった。 「知らないんですか?」 「知っていないとまずいことですか?」 綾瀬が長々と嘆息をもらした。ゆっくりと頭を横に振り、大友の顔をちらりと見る。大友はそ…

おすすめ小説から学ぶ表現、描写。有川ひろさんの塩の街より

有川浩さんの塩の街より 真奈の喉はやっぱり凍りついたように一言も声を出せなかった。 あのボストンの女の人は誰だったんだろう? 入江と初めて会ったときの「女の趣味変わったよね」という発言と一緒にときどき泡(あぶく)のように思い返される。 趣味ご変…

頷く、表現、描写をおすすめ小説から学ぶ

「高いんですか、これ」 本を返しながら照れ隠しに尋ねる。彼女は斜めに首を振った。首をかしげているのか頷いているのか微妙なところだった。 ビブリア古書堂の事件手帖より

頭を下げる。謝る 表現、描写をおすすめ小説から学ぶ

体を畳むように深々と頭を下げてくる。綺麗な髪の分け目がこちらを向く。人のつむじをまじまじと眺めたのは初めてだった。 ビブリア古書堂の事件手帖より

堂場瞬一さんの讐雨から表現、描写を学ぶ

堂場瞬一さんの讐雨より ふいに激しい疲労に襲われ、左手をテーブルについて体を支えながら鼻梁をきつく揉んだ。指を離すと、周囲の光景がぼやける。 「知らないわよ!」あおいの言葉が礫(つぶて)になってわたしにぶつかった。 堂場瞬一さんの讐雨より 「い…

小説から学ぶ表現、描写 中山七里さんの贖罪の奏鳴曲(ソナタ)より

中山七里さんの贖罪の奏鳴曲(ソナタ)より どく。 とく。 どく。 鼓動に合わせて命がどんどん洩れていく。 御子柴は空気が抜けるように膝を屈した。 腹の奥に発生した激痛はインクが染みていくように全身に広がっていく。 法廷のざわつきはいつしか感嘆の波紋…

小説から学ぶ表現、描写 沢木冬吾さんの償いの椅子より

沢木冬吾さんの償いの椅子より シャープペンシルを置き、伸びをした。椅子が微かな悲鳴を上げる。天に両腕を差し上げているうちに欠伸が出た。 心に僅か、波風。我知らず座り直した。彼らはなぜ、所属にこだわるのか。 朝特有の白けた光がブラインドごしに差…

小説家から学ぶ表現、描写 有川ひろさんの図書館戦争より

有川ひろさんの図書館戦争より 貪るように喘ぐが欲しいだけの空気がなかなか肺に行き渡らない。 全力で否定するが柴崎の目は白い。「持ちきりよ?」 男の脳裏では記憶の中に埋もれていた情報がいくつか結びついて納得したが、部下のほうは悪気なく ー そして…

小説家から学ぶ表現、描写 堂場瞬一さんの被弾より

堂場瞬一さんの被弾より あらかた骨組みだけになった家を、炎が舐め回す。顔が熱い。飛び散る火の粉が足元に落ち、野次馬の中から悲鳴が上がる。 体中のネジが緩んでしまうのではないかと思えるほどの酒を飲まされたものである。 私は目をつぶり、記憶の底を…

小説家から表現、描写を学ぶ 東野圭吾さんの容疑者Xの献身より

東野圭吾さんの容疑者Xの献身より 石神は謎の男と靖子とを、交互に見つめた。二人が挟む空気が揺らいでいるように感じられた。 「うん、まあ、二人の顔を見たくなってさ」工藤は鼻を掻きながら靖子を見た。 「ああ……そうだったのか」石神の胸に広がりかけて…