2020-11-07から1日間の記事一覧
六歳だった。 その人はずっと、駅のプラットホームに立っていた。電車が来るたび、セーラー服の赤いリボンが、ふわりとジャンプするように風になびく。季節は、夏。誕生日の前日だったから、よく覚えている。 小川糸さんのにじいろガーデンより
手のひらの温もりを感じるたび、凍り付いていた心が溶かされた。誰かと手をつないだ記憶が、わたしにはなかった。こらえきれず瞬きをすると、涙がぽとりと落下した。 小川糸さんのにじいろガーデンより
「えっ?」 そう声をもらした瞬間、彼女の大きな瞳から、涙がこぼれた。澄んだ瞳が、野生のシカみたいだ。 小川糸さんのにじいろガーデンより
おすすめ度 3.5 小杉健治さんの作品は裁判の尋問シーンが臨場感があって好きなのですが、この宿命には裁判シーンはなかったのが残念。 終盤の以外な展開は小杉健治さんらしくてよかったのですが、少し無理があるような気もしました。 展開が早すぎてついてい…
罪の声 (講談社文庫) 作者:塩田武士 講談社 Amazon 弱った歯茎から歯が抜けるようにビルや店が消えていった。そんな中「テーラー曽根」は時代の波に乗ることも荒波に揉まれることもなく、振り子のリズムで時を刻んだ。 照明を点けた後、すぐ隣に掛けられてい…
罪の声 (講談社文庫) 作者:塩田武士 講談社 Amazon おすすめ度 4.0 昭和の未解決事件、グリコ森永事件をモデルにした物語です。ドキュメントのような迫力があり、フィクションなのか、ノンフィクションなのかわからなくなる感覚でした。 グリコ森永事件をリ…
俺は髪の毛から雨粒を飛ばすみたいにして首を振り、弱気な考えをはじき飛ばす。 住野よるさんのよるのばけものより
体育館の内部は、まるで密閉された牢獄の中みたいだった。 キンと静まり返っているというのに、昼の体育や部活で生まれた音がまだ閉じ込められ、反響しているような気がした。 住野よるさんのよるのばけものより
よるのばけもの (双葉文庫) 作者:住野よる 双葉社 Amazon おすすめ度 3.5 感動する ☆☆ 笑える スリル ☆☆☆ ほっこり ビックリ ☆ 先が気になる ☆☆☆ ためになる ☆☆ 心に残る ☆☆☆ 切ない ☆☆☆ 怖い ☆ 重い ☆☆☆ すいすい読める ☆☆☆ よるになるとばけものに変身して…
「おいっ」 声をかけてから数秒後、音をたてて開いた蓋の向こうに、くくくくくっと目を三日月にして笑う矢野さんがいた。 住野よるさんのよるのばけものより
おすすめ度 3.5 古い小説なので仕方ないですが、表現や描写が少し古く感じました。 しかし、小杉健治さんらしいサスペンスです。 あっと驚く展開に、この先、どうなるんだろうと推理しながら、後半はドンドン引き込まれていきます。 あらすじ 秋場産業の創業…