静寂の表現、描写
速水は雑念を振り切って作業に没頭する。 狭い部屋の中で、三人の息遣いとキータッチの音だけが静かに流れていく。 ネメシスの使者 (文春文庫) 作者:中山 七里 文藝春秋 Amazon
日曜日の学生街はまるで死に絶えたようにがらんとしていて人影もほとんどなく、大方の店は閉まっていた。町のいろんな物音はいつもよりずっとくっきりと響きわたっていた。 村上春樹さんのノルウェイの森より
室内には時計の秒針が時を刻む音だけが響いている。社長の背後の本棚に鎮座している金色の立派な置時計 原田マハさんの旅屋おかえりより
薫子は乾いた唇をなめ、パソコン画面のファイルを閉じた。かすかなクリック音さえ、無人のオフィスによく響く。 柚木麻子さんのあまからカルテットより
こらえ切れないように、祐也先生はうつむいた。苦々しい表情で、それっきり、黙り込んだ。 よどんだ沈黙が、部屋を満たした。心臓の音が、これ以上ないくらいに速く、大きく、体じゅうに響いているのが、丹華には聞こえていた。 原田マハさんの翔ぶ少女より
小泉の声は無人の講堂に立ったように、わんわんと谺(こだま)した。 浅田次郎さんの日輪の遺産より
体育館の内部は、まるで密閉された牢獄の中みたいだった。 キンと静まり返っているというのに、昼の体育や部活で生まれた音がまだ閉じ込められ、反響しているような気がした。 住野よるさんのよるのばけものより
教室に入ってみると、小さな耳鳴りがうるさく聞こえるほど静かで、まるで一つの違う世界に放り込まれた気になった。 住野よるさんのよるのばけものより
部屋の中で動いているのは壁の掛け時計だけだ。普段は意識しない秒針の音がはっきりと耳に刻みつけられる。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ