どく。
とく。
どく。
鼓動に合わせて命がどんどん洩れていく。
御子柴は空気が抜けるように膝を屈した。
腹の奥に発生した激痛はインクが染みていくように全身に広がっていく。
法廷のざわつきはいつしか感嘆の波紋となって、静かに広がっていた。
その凝固した表情からは相変わらず感情を窺い知ることができない。
胸底から焦燥が湧き上がり始めた時、岸辺に踏みとどまっていた死体が押し寄せてきた流れにあっけなく呑み込まれた。
雨音交じりにタイヤが盛大な飛沫(しぶき)を上げている音も聞こえる。
東條製作所 ー 羽虫群がる常夜灯に浮かび上がったブリキ看板は所々赤錆が浮き、四隅みが剥がれている。敷地に入ってもいないのに、もうオガクズの臭いが漂ってくる。