小柄で大きな目がくるくると動くところが、小動物を連想させる。社内では中高年のアイドル的存在だった。
国道に面した店は、トラックの激しい往来のせいで、排気ガスや粉塵にまみれて、うっすらと粉をふいたようになっている。まるでセピア色の映画を見ているようだった。
薫が指差す方向には、水平線に沈みかけたオレンジ色の太陽が輝いていた。その光は海面にひと筋の光を映し出し、まっすぐにこちらへ向かって走っている。それはまるで、三人の立つ位置から夕陽まで橋がかかっているように見えた。
その噂は無色透明の十代の心に大きな衝撃をもたらした。
一瞬だったが、晴美は指先が白くなるほどグラスを強く握り、目に力を込めて知子を睨んだ。
ちょっと夢を語ってみたかったのだと、心の中で舌を出した。
知子は、チャコールグレーの膝丈のワンピースに同色の七分袖のジャケット姿で、そのまま授業参観に出かけてもいいような格好をしている。形のいい小さな唇をグラスに触れさせながら、黒目がちな大きな目だけをこちらに向けた。
初老の店員は、ブルースを歌わせたら魅力的だと思わせるような錆びた声で尋ねた。
白日夢は延々と続いて……。
窓辺のカーテンがゆるやかに波打ち始めたのが視界に入り、ふと我に返る。