日頃は、人を下目に見て、威張っているその人物が、想像もできない腰の低さで挨拶した。
高く澄みきった空に、鱗雲が浮かび、秋風がたつ季節になった。
薄暗い空の彼方に、ぽつんと紅い点のようなものが浮かんだかと思うと、みるみる丸く膨らみ、側峰のマウェンジ峰の背後から、オレンジ色の光輪を放った。雲海を押し分け、空一面を紅く染めて、太陽はぐいぐいと昇って行く。荘厳な日の出の一瞬であった。
オフィスの窓から見える高い空の遠くに、黒いカーテンのような雨雲が垂れ下がったかと思うと、ざっと雨が降り出し、みるみる、辺りが暗くなった。
熱いコーヒーが冷えた五体のすみずみに滲みわたる。
「団交が終わりました、遅くなりご迷惑をおかけしました」
恩地が云うと、眼で頷き、
やがて、しらじらと夜が明け、紫の地平線に一条の赤い光が射したかと思うと、アフリカの太陽が、ぐいぐいと昇る。
紫色につつまれた夜明け前、灌木はまだ黒々とシルエットを描き、静まり返っている。昨夜の雨は上り、靄がたち籠めている。
二人の子供の名を呼んだが、子供たちも激しい雨脚の中で、もはや振り返らなかった。飛沫で白く煙る中を、妻と子の姿が、次第に遠ざかって行く。
濃厚なブルーの空に、雪山のような雲が動き、果てしない草原に、灼けつく太陽の陽炎が波打っている。視界を遮る何ものもない。