人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

七月隆文さんのぼくは明日、昨日のきみとデートするの表現、描写

 

 

 ぼくを映す瞳が光って、透明な雫を落とす。

 

 

 真っ黒になったテレビが呼吸のような間合いで静まりかえり、部屋の空気がしんと落ち着く。

 

 

 彼女が背伸びする。

 背中をしなやかに曲げて、細い腕をすらりと天に伸ばす。その磨かれた白さ。反らせた胸が、普段は意識させない豊かな膨らみを作る。

 

 

 川から強い風が吹いてきた。

 水面に映る濃い影が、磨りガラスのようにぼやける。

 

 

 その答えは一口含んだ彼女の瞳の輝きが雄弁に語った。

「おいしい!」

 素直な響きだった。

 

 

 橋を渡りながら、好奇心を宿した瞳をあちこちに移していく。

「あ、見て、南山くん」

 鴨川の先を指さす。

「山、きれいだねぇ」

 

 

「なんか、女の人に声かけてなかったか?」

 心臓が跳ね、一瞬にして毛穴が開く。そこまで見られてたのか。

 

 

 水面が風に震えて、白い鱗(うろこ)模様を浮かべている。すぐに鯉が何匹も泳いでいた。

 

 

 鼻筋がなめらかに通っていた。薄くてぴんと形のいい唇も、顎のラインも、頬も、ぜんぶがやわらかで品のある線で描かれている。

 

 

 にこりとする。白くて綺麗な歯並びが見えた。

 福寿さんはなにげなく前に向き直って、少し遠いまなざしで空を仰ぐ。

 

 

 彼女の緊張が緩んだのを感じた。

 その顔に、微笑みの前の前くらいのものが朝靄のようにかすめた。

 言うべきことが尽きて、ぼくは黙る。

 

 

「一目惚れしました!」

 彼女の表情は動かない。と思うと、小さく唇が動く。「えっ」と言ったふうに見えた。

 ぼくは視線を一瞬横に滑らせる。まわりには誰もいない。よかった。また彼女に目を戻す。

 

 

 ぼくのことを多少覚えていたんだろう。瞳にそんな色が浮かぶ。

 

 

「あのっ」

 真後ろから声をかけたとたん、彼女のなだらかな肩がふわりと漣(さざなみ)をうつ。

 ……私かな? というふうに振り向いてきた。

 

 

 彼女はそれほど背が高くないから、ぼくには顔がよく見えなかったのだけど、そのすとんと落ちる綺麗な髪や、可愛らしいけど、品のいい服装や、何より全身からにじんでる空気が「すごくかわいい子の予感」をさせた。