石丸に声をかけた千歳の視線が、そのままふと後ろへ滑った。
大して起伏が豊かな体でもないくせに、堂々としているだけインストラクター風のコスプレがはまっている。
「……そうですか」
ありがとうございます、といえばそれで一件落着だ。だが 腹の底で何か重たいものが寝返りを打つようにのたうった。
「じゃあ辞めたら」
あっさり即答されてスズは言葉を失った。
「……そこ、ふつうもうちょっと悩み聞いたりとか……」
「お前、俺の基本前提を忘れてないか?」
コーヒーをすすっていた司がカップの縁からちらりと目だけを上げる。
はしゃぎながらケーキを半分食べたところで司が尋ねた。
「そんで、相談ってのはどの話? いろいろ揉めた話は聞いてるけど」
いきなりケーキが砂を噛むようになった。
「ついてきたら全員絶交」
氷点下の声音に巧が石丸同様、石化した。
相手の顔を見るなり互いに視線が切り結んだ。 ー優依である。
お互い腹に一物の顔だ。