半沢が見た竹清翁の横顔には、長く満ち足りた人生を駆けてきた人の余裕があった。「これからは会社のためやのうて、世の中のために生きよう。そう思ったんや。そこでここの氏子になって、地域の人たちと交流して、この人たちのために何かしてやろうと考えた。するとそこには、いままでにない心の豊かさがあった。自分のためではなく、他人のために何かをするというのは、金では買えん幸せや。お祭り委員会にあんたが出てくるようになって、他のひとから、あんたが仙波さんを助けるために銀行とやりあったと聞いたとき、すばらしいと思った。自分の成績のために何かをするのは当たり前やけど、成績にもならん、会社の居心地が悪くなるかも知れんことを、客のためにやる。簡単そうでなかなかできんことや」