「あなたになかったものは、自信ではありません」
「自信では、ない」
本藤が顔をあげる。
涼子は本藤を、生徒に接する教師のような目で見据えた。
「あなたになかったものは、覚悟です」
本藤ははっとしたように目を見開いた。涼子が続ける。
「誰だって自信などありません。勝つか負けるか、成功するか失敗するか、その狭間でいつだって人間は悩んでいます。ただ、負けたときの覚悟があるのとないのとでは、その後の人生がまったく違います。あなたのお父様が、なぜ、成功されたのか。それは、自信があったからではない。失敗したときの覚悟が出来ていたからです。負けたときの覚悟が持てない限り、あなたはお父様を超えることはできません」