あなたも僕を護ってくれようとしたんですか。
僕は十八歳になったんじゃない。
皆が十八歳にさせてくれたんだ。僕一人では、とてもこんな風に育たなかった。自分の失敗を直訴し、他人に打ち明ける勇気など持てなかっただろう。
「人間、弱くたって生きていく方法なんていくらでもあるのよ」
ふと興味が湧いた。
「たとえばどうするんですか」
「弱いことを認めてしまうこと。そうすれば他人に累が及ぶことも少なくなるでしょうね。もっとも、これは他人の受け売りなんだけど」
大人はいつも何かを怖れている。
会社での地位は安泰なのか。
自分の子供が何か問題を起こさないか。
老後の保障はあるのか。
未来は安泰なのか。
まだ十四歳の子供にも、大人の不安など手に取るように分かる。卑近で、みっともなくて、直接だからだ。
馬鹿らしい、と雅彦は思う。明日のことなど誰にも分からないし、やってくるものは確実にやってくる。悲劇に前兆も警告もないのだ。
「大勢の不幸を見て見ぬふりをするのだって弱い人間のすることだ。自分は関係ない、あいつらはあいつらで解決すればいい。そうしう便利な言い訳を使って、面倒なことやしんどいことから逃げているだけだ。情けは人のためにならずって言葉、知ってるか」
「他人に情けをかけても、その人のためにならない?」
「違う。まるっきり逆だ。他人に善行を施せば、結局は自分も報いられるって意味だ」