おすすめ度 4.2
中山七里さんの作品の中でも一二を争うくらいおもしろかった。家族愛、人情味溢れるミステリー。
自宅が全焼し父親の秋山史親が焼死した。住む家と一家の主を失い残された母子三人は、史親の実家の秋山善吉工務店でお世話になることになった。
そんな三人の新しい生活に、様々な苦難が待ち受けていた。
クラスメートから苛めにあう次男の太一、ヤクザの世界に足を踏み入れそうになる長男の雅彦、パート先でクレーマーに狙われた景子。
火事が放火ではないかと疑う刑事。
苦しむ母子たちを秋山善吉が救う。
最初は頑固で偏屈な善吉を嫌っていた母子たちだが、善吉の本当の優しさを知り、心を開いて変わっていく。
胸にグッとくるストーリーの連続です。
あらすじ
第一章は、太一、奮闘する
太一は転校してすぐに、クラスの番長の彰大に目をつけられ苛めの対象になってしまう。
太一は苛めから解放されるために、兄の雅彦から教えられたのは、やり返すことだと言われ、いじめっこたちと戦うと決める。その武器として秋山工務店から鑿(のみ)を持ち出そうとしたところを善吉に見つかり、苛めにあっていることを話す。
善吉は、苛めるやつらは弱いから苛めるんだ。だから、仕返しするのではなく、護ってやれという。
よくわからなかった太一だが、善吉の言葉をきいて少し余裕を持てるようになった。
第二章は、雅彦、迷走する
長男の雅彦は中学生で喧嘩が強い。転校してから、喧嘩を売られることも多いが、いつも勝っていた。
雅彦は前の中学の先輩の曽我と偶然町で出会った。曽我は高校の年齢のはずだが、赤い髪の毛をして高校生には見えなかった。
訊くと曽我はハーブを販売する店の店長しているという。そして雅彦はその店でバイトすることになったが、そこはヤクザが経営する脱法ハーブの店だった。
第三章は、景子、困惑する
居候の身から独立し、雅彦と太一、子供二人を立派に育てるために景子は正社員の職を探すが、なかなか見つからない。
正社員登用がある衣料の販売の職につくが、クレーマーにつきまとわれる。クレーマーは景子の客への対応について、本社にいうと脅し、十万円を要求してきた。正社員になるために本社に告げ口されたくない。
景子は、困惑する。
そんな景子の異変を善吉は気づいていた。
第五章は、宮藤、追及する
刑事の宮藤は拘泥せずにはおられない事件がある。それは墨田区で起きた秋山家火災事故だった。その事故で秋山史親が焼死した。
警察は事件性なしとみているが、宮藤は納得できない。史親の妻景子に疑いの目を向けた。
宮藤は任意で景子の事情聴取をし、自白がとれると思ったところに邪魔が入った。
第六章は、善吉、立ちはだかる
刑事の宮藤は秋山家の火災は何者かが秋山史親を殺害するために放火したのだと疑わなかった。妻の景子に疑いの目を向けていたが、史親の父親の善吉に変わった。
秋山善吉工務店の近隣で善吉について聴き込みするが、善吉の評判はよかった。
昔気質の職人
法被を着た不言実行
古き佳き昭和ひとケタ
宮藤は善吉を追い込むことができないまま、ある事件が起こってしまう。
そして、最後に真相が明らかになる。