小柄で大きな目がくるくると動くところが、小動物を連想させる。社内では中高年のアイドル的存在だった。
知子は、チャコールグレーの膝丈のワンピースに同色の七分袖のジャケット姿で、そのまま授業参観に出かけてもいいような格好をしている。形のいい小さな唇をグラスに触れさせながら、黒目がちな大きな目だけをこちらに向けた。
赤いワンピースを着て、栗色の髪の先をくるりと巻いている。二重瞼で顔の輪郭は丸く、全体的に幼く見えるが、下がった目尻と口元に皺がある。たぶん三十代の後半だろう。厚化粧が平坦な顔に無理やり凹凸を作っていた。
不意にぷつんと言葉が途切れる。俺が目を上げると、篠川さんはぎょっとしたように視線を膝に落とした。つややかな長い黒髪が頬を隠している。
長い睫毛の下にすっと通った鼻筋。薄い唇が軽く開いている。柔らかい感じの美貌には見覚えがあった
ノースリーブの白いブラウスに紺のロングスカートという地味な服装で、ゆるく三つ編みにした長い髪を、うなじの上で巻き上げて留めていた。色素の薄い肌に大きな瞳の黒さが目立つ。まっすぐ伸びた鼻筋の下に薄い唇があった。
二十代前半だろうか。ピンクのミニのチュールレースのスカートが、歩くたびにふわりと持ち上がり、下着が見えるのではないかとハラハラする。カールした茶色い髪も、重たいほどのつけまつげも、まるでアイドルグループのメンバーのようだった。
剥きたての茹で卵のような美しい肌に、黒目勝ちの大きな瞳が魅力的だ。聞けば、まだ十九歳だという。
三十二歳という年齢よりも若く見える。髪は明るい茶色に脱色されているが、きちんと手入れしているわけではないようで、所々黒くまだらになっていた。
「各誌でひっぱりだこのライターである」と講師紹介に載っていたけど、岸川先生にそんな雰囲気はない。茶色にカラーリングした髪の毛はすそで軽くパーマがかかり、すらりと背が高い。きっちりしたグレーのスーツを着ているせいか、ただのＯＬに見える。陸上でもやっていたのか、ふくらはぎから足首の筋肉は無駄がなくきれいだ。
岸川先生はそう言って、サンドイッチをつまんだ。きれいな長い指。指先とか、髪の先とか。岸川先生は先端がきれいだ。
母親は素早く帽子を脱ぎ、サングラスとマスクを外した。日本人離れした大きな瞳に尖った鼻と大きくて薄い魅力的な唇が現れた。薄手のコートをするりと脱ぐと、身体の線にぴったり沿ったロイヤルブルーのワンピース姿になった。
美知子が姿を現した。細みの体に、上下黒のパンツスーツがよく似合っている。今夜も、いつも通り髪をアップにまとめている。店に出るときはいつもそうだった。
ふっくらとした頬の肉付き、いつでも笑みをこぼせられる垂れた目尻、ショートヘア。すべて能見の知っている真希だった。さすがに、皺が少し増えたか。
黒のパンツスーツ姿で、やや茶がかった長い髪を後ろでまとめている。化粧は薄め、指輪もピアスも銀、あるいはプラチナ。その輝きだけでは、梢にはどちらか判然としない。
結子はウェイトレスにコーヒーを頼み、小さな顎を自分の手のひらに載せた。
美知子の尖った顎が上を向いた。口に手を当て、大きく笑ったのだ。美知子の白い喉が眩しい。
ヘアカラーでブラウンに染め上げたと覚しき髪の毛が、艶やかに光る。
待合室から有働達子が出てきた。髪をひっつめにした色の白い小柄な婦人。
私は、ジーンズに包まれた形のいい尻を、半ば呆然としながら見送るだけだった。
目の前で冴の革ジャケットの前が開き、薄い萌黄色のセーター越しに、体の線がくっきり浮かび上がる。
黒目がちの目が印象的な、顔の小さな女だった。三十前の若い女に見えたが、薄暗いせいだと草薙は気づいた。ドアノブを持つ手の甲は主婦のものだった。
振り返ると、背の高い女性が仁王立ちになってこちらを睨んでいた。長い髪をひとつに束ね、キャップをかぶっている。
小柄なフミちゃんが大福のような丸顔をのぞかせた。フミちゃんとは幼馴染みだ。
色が白くて、剥きたての茹で卵のような肌をしている。肌だけ見れば、とても四十代には見えなかった。
四十代半ばと見える池田麻美子は、かぼそい声で応えた。十萬里は、お辞儀をしながら麻美子の全身を素早く観察した。水色のセーターに黒いパンツという出で立ちで、アクセサリーはつけていない。細面の上品な顔立ちだ。その表情からは、おせっかいな姑に対する怒りは感じられなかった。
相変わらずジーンズの軽装である。ポロシャツの袖からは、はち切れそうな腕がむにゅっとはみ出している。
走ってきたのか、頬を上気させている。ピンクのコットンセーターに白いキュロットから伸びた素足が、いつにも増して初々しい感じがした。
花柄のチュニックにデニムを合わせている。あのチュニックはたぶん綿百パーセントだ。気負っていない素朴な感じがする。ピンクのカーディガンを羽織っていて見えないが、たぶんワンピースはノースリーブだ。暑いときにはカーディガンを脱ぐのだろうか。そして贅肉のついていないきれいな二の腕を男性陣に見せつけるのか。足許はと見ると、素足にサンダルだった。それも踵がペタンコだ。ただでさえ小柄なのに。
華奢で小柄で、さらさらの長い髪が、涼やかな風を連想させる。
フラワーアレンジメント教室の講師は七十代だ。年齢相応の皺はあるが、この年代にしては珍しく彫りの深い美人で、ボリュームのある白髪のショートカットがよく似合っている。
「六十歳か……」喜美恵が天井を仰いだ。綺麗な白い喉が露になる。「もうちょっと上、六十五歳ぐらいかな」
髪は昔と同じ、耳が隠れるぐらいのショートカット。冗談のように大きな目も変わっていない。それどころか、化粧のせいで、さらに強調されている。少女らしくふっくらとした頬は、少しだけ細くなっていた。ぴしっとしたパンツ姿なので、腰の細さが目立つ。白いブラウスのボタンを首の上まで留め、軽く温かそうなキャメル色のコートをその上に直に羽織っていた。
女性の顔を見て思わず息を呑んだ。
頬が削げ落ち、目もとも深く落ち窪んでいる。長袖のワンピースを着ているが、激しくやせ細っているのが服の上からでも察せられる。
樹理はテーブルに頬杖をついた。今時の女の子には珍しく色白だ。陶器のような肌とでもいうのか、表面にごくわずかな凹凸さえない。若さの力だけではない。手間もかかっている。
彼女がやや吊り上がり気味の目を見開いた。いかにも気が強そうだが、そうすると一層美人になる。
小柄で地味な丈の長いワンピースを着て、白髪の交じった頭髪をひっつめにしている。今年五十二歳ということだが、六十以下には見えない。
ドアが開いて神崎真紀子が入ってきた。グレーのスーツに白いブラウスという出で立ちで、黒い髪を後ろで結んでいる。
玄関が開いて夫人が姿を現した。色白で顎が細い輪郭、一重で切れ長の目は、さぞかし和服が似合うだろうと思わせる。三十六歳ということだから星野より四歳上だが、瑞々しさの残る肌を見ると、とてもそうは思えなかった。
胸まである栗色の髪、横分けした前髪と、毛先に向かってくるりと巻いたパーマがかわいらしい。
彼女は、ユニットメンバーの中では大人しい顔立ちをしていた。面長で眼は細く、唇も薄く、肌は色白で滑らかだ。
彼女の髪は首筋あたりでまとめられるほど長かったが、ぱさぱさとして艶がなかった。目鼻立ちは整っているのに、化粧が薄いためか地味で老けた感じのする女だった。
くすくす、と笑い声がした。音山が振り返ると、クリップボードを持った長身の看護師が立っていた。神宮寺千香だ。切れ長の目にぷっくりした唇。ストレートの黒髪を後ろでまとめているが、数本が横向きに飛び出している。それはだらしなさと色気の狭間で、独特の魅力を放っていた。
「最後の医者は桜を見上げて君を想う」より
