師走の風がビルの間を音をたてて吹き抜け、街路樹の落葉が足元を、かさかさと舞って行く。
サンダルを突っかけて表に出る。息が白く凍る。
尖った寒気が鼻腔を突き刺した。
雪の降り方はますます激しくなってきた。東京の道路には珍しく、路肩はすっかり積雪で覆われた。さすがに車線はアスファルトが顔を覗かせているが、表面はきらきらと乱反射しているところを見ると、部分部分で凍結しているようだ。
時折思い出したように風が起こり、冬枯れた木立の間を駆け抜ける。やってきては引いていく、葉ずれの波。
三月に入ったとはいえ、まだ風はかなり冷たい。マフラーに顎を埋めるようにして歩き出した。
彼は両手をポケットに突っ込み、身体をやや前屈みにして足を送りだした。
ため息をつくと、白くなった息が目の前に広がった。
バスを降りると、木枯らしが吹いていた。街路樹の根元に落ち葉が小さな吹き溜まりを作り、バレリーナのようにくるくると華麗に舞っている。
空を見上げる。街灯の光の中で、大きな雪の粒が乱舞していた。雪の照り返しを受けて、心なしか街灯が明るくなっているように思えた。
低い重い雲の下。冬枯れた木立の中に、ふたりの吐く白い息が流れる。
駅を出ると、途端に寒風に襲いかかられ、全身が固まった。
頭を締めつけるような寒気が街を覆っていた。空は鈍色に曇っていた。荒は自分の肩を抱きながら、とりあえず駅舎に入った。
スマホで店を検索しようと立ち止まり、凍えた両手に息を吐く。呼吸は白く、煙のようだ。上手くいかない指先の操作に、比奈子は手をこすり合わせて空を仰いだ。
北風が目に滲みて、瞬いた目が涙で潤んだ。星のきれいなこんな夜は、放射冷却のせいで冷え込みが厳しい。
少し土の匂いのする冬めいた風が吹いていた。街路樹の落ち葉がかさかさと音を立てて、二人の足元を転がりながらすり抜けていく。
雪はすっかり上がっており、名残は道路の端が薄らと白くなっていることだけだ。夜空は高く晴れ上がっており、冷たく凍りついた空気が肌を突き刺す。吐く息が白い塊になって顔の周りを漂ったが、夕方の天気予報で「明日は三月並みに暖かくなる」と言っていたのを思い出す。