人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

2022-01-13から1日間の記事一覧

きんと冷えた新しい朝、吐く息の白さまでもが蘇った

今朝、霜柱を踏みしめたとき、紫紋の脳裏をかすめたふたつの風景があった。 広々とした故郷の畑。初霜が降りた日、思う存分踏みしめて遊んだ少年の日。きんと冷えた新しい朝、吐く息の白さまでもが蘇った。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより

中からふくらはぎほどもありそうなみずみずしい大根が現れて

「そがに思うて、ほれ、特別におっ母が作っとる畑で採れた大根、持ってきたがね」 新聞紙の包みを差し出した。中からふくらはぎほどもありそうなみずみずしい大根が現れて、「うわあ」と紫紋は歓声を上げた。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより

霜柱をみつけて、さくさくと足の裏で冬の到来を知る

安物のコートを羽織って出勤する。途中、霜柱をみつけて、さくさくと足の裏で冬の到来を知る。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより

泣き出す瞬間のように瞳がかすかに震え、かたちのよい唇がうっすらと歪んだ

その刹那、マリアは不思議な表情を浮かべた。泣き出す瞬間のように瞳がかすかに震え、かたちのよい唇がうっすらと歪んだ。どきりとして、紫紋はその白い顔を凝視した。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより

耳朶をしたたかに打った

女将の言葉は、紫紋の耳朶をしたたかに打った。それはとうてい、信じることも受け入れることもできない言葉だった。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより

熱い汁をすする音、浅漬けを噛む音、やわらかな鮭のたたきをおごそかに口に運んで

女将は箸を手にすると、無言で食事を始めた。熱い汁をすする音、浅漬けを噛む音、やわらかな鮭のたたきをおごそかに口に運んで、女将はずっと無言だった。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより

無造作に結んだ長い髪が、ダッフルコートを着こんだ背中の上で揺れている

マリアは、紫紋の少し先を歩いていた。無造作に結んだ長い髪が、ダッフルコートを着こんだ背中の上で揺れている。月光を弾いて跳ねるつややかな魚のような動きをみつめながら、紫紋は黙って彼女の背中についていった。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより

桜貝のような爪が並んだ左手の指先に

急須のふたにきちんと指先を添えて、彼女がお茶を淹れている。桜貝のような爪が並んだ左手の指先に、紫紋の視線は吸い寄せられた。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより