「違います。二人とも栄養不足なんです」
大庭小萬里は断言した。
「僕たちが栄養不足っていうんですか? こんなに太っているのに?」
いったい大庭小萬里は何を言っているのだろう。
「必要な栄養素が足りてないから、もっと栄養を取り入れろと脳が指令を出しているのです。ですが、あなたちの食事は炭水化物と糖分ばかりですから、いくら食べても脳が満腹を感知しないのです。悪循環です」
「あくまでも味で勝負するという初心を貫きなさい。そして、五十年後、百年後に老舗と呼ばれるようにおなりなさい。それくらいの高みを目指して頑張らないといけめせん」
気高い気持ちを持ち続けなさい。
「人生に区切りをつけたらどうかしら。元気でいられる時間がどんどん残り少なくなってるんですよ。生活を根底から見直した方がいいと思います。少しずつ肩の荷を下ろしていく時期に入っているのですから」
「だってあなた、ご存じかどうか、筋肉をつけておかないと、寝たきり老人になる確率がぐんと上がりますから。死ぬときは誰しも苦しまずにぽっくり死にたいじゃありませんか」
ブスとして生き直せ……もしかして、それは鋭い指摘ではなかったか。それまで考えてみなかったことだが、どうやら自分は<美人>として生きてきたらしい。そうでなければ、太ったくらいで、これほど気分が沈むはずはない。これほどまでに自信を失くすはずもない。