さだまさしさんのアントキノイノチの表現、描写
そしてもう僕の心は、この時には完全に氷点に達していた。
ただの八つ当たりなのだが、僕に対する怒気が向こうを向いた松井の肩の辺りから噴出しているのがわかる。
松井は百間長屋を過ぎると、ついに僕より少し遅れるようになった。
「しんがりをやるか?」
僕が訊くと、照れくさそうに笑いながら、
「ああ、いいけど」
と頷いてから言った。
「思ったよりきついぜ、この山」
僕は心の中で唾を吐いた。
週に一度くらいは近くのコンビニに出かけて買い溜めするのだが、世の中のニュースやゴシップには
なんの興味も湧かなかった。というよりも自分の心が耳を塞いでいる。全ての情報が無駄なデータであり、ノイズにしか感じられなかった。
なんだか燃え尽きてしまったような胸の奥の重さがやる気と心を引っ張る。
高校をやめた後、僕は自律神経の失調と言われ、その後、次第に精神失調が進み、鬱の症状が出たりするうち、ついには失語症状が出た。まるでコンピューターウイルスに少しずつ侵食されるハードディスクのように僕の心は傷んでいった。