休日のファミリーレストランは混んでいる。はしゃぐ子供とそれを叱る親、学生のグループたちの騒々しい笑い声に満ちた店内を、ホールスタッフが忙しなく行き来している。
「フレッシュピーチとホイップ生クリームのかき氷です」
少女の前に、華やかにデコレーションされたかき氷が置かれた。
「これずっと食べたかったんだ。缶詰じゃなくて本物の桃なんだよね」
目を輝かせる少女の向かいには、一組の男女が座っている。三十代手前くらいで、親というには若い。男の目はナパージュにくるまれた艶やかな果実にそそがれている。
「かき氷に生クリームって妙な組み合わせだな」
「普通じゃない」
少女はきょとんとした。
「俺が若いころ、そういうのはなかったな」
「その言い方、おじさんみたい」
「みたいじゃなくて、おじさんなんだ」
男はあっさり言い、少女はまばたきをした。
「そっか。来年で四十だっけ。出会ったときからあんまり変わってない感じ。ふたりで並んでると同い年くらいに見える」
「そのうちわたしのほうが年上に見られそう」
女のほうが情けなさそうに両手で頬をはさむ。少女が笑ったとき、テーブルに置いていた携帯電話が震えた。画面を確認中し、少女は興味を失ったようにすぐに戻してしまう。
「返事しなくていいの?」
「うん。お母さんから。今夜お泊まりだって」
また彼氏とデートだよ、と少女はうつむきがちにつけ足す。