2022-05-21から1日間の記事一覧
しばらくすると前方に万場大橋が見えてきた。欄干にもたれて見下ろす庄内川の風景は水面の乱反射が眩しく煌めいて素敵なのだが、ルシアが横にいるのなら話は別だ。 中山七里さんのさよならドビュッシーより
一小節毎に突き刺さる声にあたしの指はますますからめ捕られて自由を失う。指の一本一本が言葉の針で刺されているようだ。本来なら華麗で力強いはずの曲があっという間に無様でへなへなした雑音に堕ちていく。 中山七里さんのさよならドビュッシーより
さよならドビュッシー (宝島社文庫) 作者:中山七里 宝島社 Amazon 銀盤にそっと指を置く。 右足は軽くペダルに乗せる。 深呼吸を一つしてから指を走らせ始める。 低音から始まる序奏。そして和音からしなやかな三度の重音に移った時、早速鬼塚先生の叱責が飛…