小説に出てくる名言 朝井リョウさんの世にも奇妙な君物語より
最近の親は、子どもから様々な選択肢を奪う。残酷かもしれない童話の結末、気持ち悪いかもしれないカエルの表紙の自由帳。「かもしれない」を奪っていくことは、良くも悪くも、予想外の出来事が丸ごと奪われていくことに等しい。陥るかもしれなかったトラブルと同時に、拡がるかもしれなかった可能性も潰えていくのだ。自分が何を好きなのか、何を苦手だと思うのか、子どもが自分の頭で考える前に、親がありとあらゆる選択肢を奪っていってしまう。
「やだ」
学人は、すぐに、絵本のほうに視線を戻してしまった。
「目立つことなんてしたくない。ぼくがなにかすると、みんな、笑うから」
小さな背中の向こう側から、もっと小さな声が聞こえる。
「そんなの、先生も、知ってるでしょ」
子どもは、敏感だ。大人が思っているよりも、人のことを見ているし、空気を読むし気も遣う。大人が大人にそうするときよりも、もっと、ずっと高い解像度で。
我々は、話せばきっと、わかり合えるはずなのだ。だって、性別や年齢は違えど、同じ心と言葉を持つ人間同士なのだからーこれは、最近読んだ自己啓発書に書いてあった言葉だ。