イライラしたり悲しい気持ちで作ったりしたお料理は、必ず味や盛り付けに現れますからね。食事を作る時は、必ずいいことを想像して、明るく穏やかな気持ちで台所に立つのですよ。
祖母がよく言っていた言葉だった。
私の中で、野菜に対する見方が大きく変化した。今までは自分がすべて料理を作っているような気持ちになっていたけれど、私は、単に素材と素材を組み合わせたに過ぎないのだ。そのことに、やっと気がついた。野菜を作ったのは農家の人だし、もっと言えば、農家の人だって、野菜を育てることはできても、野菜そのものの種を創り出すことはできない。
祖母は、味噌も醤油も切干大根も、すべて自分の手で作っていた。お味噌汁の一杯にも、煮干しやかつお、大豆や麹など、たくさんの命が含まれていることを初めて知った時は驚いた。