人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

山崎豊子さんの沈まぬ太陽に出てきた名言

山崎豊子さんの

沈まぬ太陽 会長室篇 下より

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 利権構造と、人間の物欲は、真実と正義を埋もれさせてしまうのではないだろうか。

 恩地の脳裡に、ニューヨークの動物園の「鏡の間」で見た痛烈な言葉が浮かんだ。

鉄格子を填め込んだ檻の向うに鏡があり、人間の上半身が映る仕掛けになっていた。

その鏡の上には、『世界で最も危険な動物』と記されていたのだ。

 和光自身は、五年前、監査役に就任した時、監査役たる者の「五シンの戒め」を自らの言葉で記し、座右の銘としていた。「一、私心を捨てること。二、保身を捨て使命に生きること。三、邪心を捨てること。四、野心を捨てること。五、慢心を捨てること」。

山崎豊子さんの沈まぬ太陽

会長室篇 上より

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 ペンを置くと、ラックから毎朝新聞を引き抜き、「読者の声」の欄の頁を、再び広げた。出勤途中の車の中で、既に眼を通していた欄だった。

 おねがい パパ

  もう一回だっこして

 もう一回

  いっしょにごはん

 いっしょにごはん

  食べてよ

 早く早く

  おうちに帰ってきて

 そして

  おしゃべりしよう

    (遺児・神戸在住)

 御巣鷹山で、父を亡くした子供の一途な思いを籠めた言葉だった。もはや帰って来ることのない父を、待ち続ける子供の姿が瞼に浮かんだ。

 国見は、鋏でそこを切り抜いて、机の引き出しにしまった。先日来、国民航空の社長就任を要請され、二度にわたって固辞したにもかかわらず、重ねて要請を受けている国見にとって、この子供の願いは、単に第三者として見過ごすことは出来なかった。

沈まぬ太陽 御巣鷹山篇より

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 恩地は、手ぶらのまま遺族の待つホテルへ向かいながら、新聞で知った堂本社長の、辞意表明を思い返した。

 五百二十名もの乗客の命を奪ったからには、辞意表明は当然であるが、その前に事故の現場へ足を運び、航空事故の凄まじさを身を以て知るべきである。学校の待機所で、遺族確認のために呼ばれる瞬間を、拷問のような苦しみの中で待ち受ける遺族、足一本、手一つと、狂ったように遺体を探す遺族たちの前で、頭を垂れ、謝罪すべきである。また、遺族たちから、夫を、子を返せと責められ、土下座して謝る社員たちの姿をも、その眼に灼きつけてから、辞意を表明するのが、生命を預かる航空会社のトップたる者の、最低限の倫理と責任である。

 事故発生直後、陳謝を繰り返すばかりで、進退を明らかにしなかった記者会見から一転して、辞意を表明したのは、恐らく、政治家の圧力に屈したからで、堂本の本心は、何とかここを凌いで社長の座に居座り続けよういうのであったに違いない。

山崎豊子さんの

沈まぬ太陽 アフリカ篇 下より

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 技術屋である私は「安全工学」で古くから知られている"ハインリッヒの法則"に思いを致さざるを得ません。これは航空事故だけでなく、炭鉱での落盤事故や多くの労働災害の際、よく引き合いに出されるものです。要約しますと、「一つの事故が発生した場合、その背景にはインシデント(事件)には至らなかった三百のイレギュラリティ(異常)があり、さらにその陰には、数千に達する不安全行動と不安全状態が存在する」という説です。

ハインリッヒの法則とは? Wikipedia