「後悔してリセットできるわけでもないだろう」
「ちゃんと自分の仕事をする」
柴崎に宣言するように呟く。この仕事よりあの仕事がよかったと駄々を捏ねるのはそれこそ子供のわがままだ。自分の仕事をこなせない奴が自分を信用しろと主張する権利はない。
余計な配慮をするなと同士に噛みつくのは自分の仕事をこなしてからだ。
「図書館は学校の延長機関ではなく、また家庭の躾の代行機関でもありません。もちろん教育の一助となることを否定するものではありませんが、開放された多様な図書の中から子供たちが自由に本を選択できる環境を提供することが自立への支援になると考えています。何より、娯楽作品との距離の取り方は保護者が指導すべきものです。その責任を学校や図書館に求めることは、保護者としての責任を放棄していることになるのではありませんか?」
「協力してもいいけどめんどくさいってあんのよ。ほら、災害の募金なんかでも電話するだけで募金できるシステムあるじゃない? 振り込んでくださいって言われるとわざわざ銀行行くのはめんどうくさいってなるけど、電話で済むならしてもいいって人がいっぱいいるのよ。そういう『面倒くさい』を拾ってけってことじゃないの、折口さんが言ったのって」
「大人だって話し言葉で誤謬なんて単語をナチュラルに使う奴そういないわよ。あんたたちの年齢でとっさに意味わかる奴何人いるの。ひたらかすみたいに難しい言葉使うのやめときな、親切じゃないから」
ホントに頭がいい奴は誰でも分かるように話すのよ。そう片付けられると一言もない。
「お前は脊髄で物を考えるクセをどうにかしろ、案件は脳まで持っていけ」
「正論は正しい、だが正論を武器にする奴は正しくない。お前が使ってるのはどっちだ?」