トレーサビリティとは?
食品の移動の履歴を把握する可能性や能力
農林水産省では、国際的な定義を採用し「生産、加工及び流通の特定の1つ又は複数の段階を通じて、食品の移動を把握できること」としています。
具体的には食品の取扱いの記録を残すことにより、食品の移動を把握できるようにする仕組みのことです。
このため、生産、流通、小売の各段階で「いつ、どこから、どこへ、誰が、何を、どれだけ」といった入出荷の情報を個々に記録しておきます。
トレーサビリティの意義
トレーサビリティが確立していれば、食品の安全性に関わる事故や不適合が発生した際に、以下の対応が可能になります。
①対象商品を特定した迅速な対応
②問題の発生場所の速やかな特定
③不適合食品の絞り込みや正確で迅速な撤去回収
④事業者の責任の明確化
トレーサビリティの例
牛トレーサビリティ
2001年(平成13年)の国内でのBSE(牛海綿状脳症)発生を契機として、牛トレーサビリティ法が制定
国内で飼育されるすべての牛に10桁の個体識別番号を付与し、これを一元的に管理することにより、生産・流通の各段階において正確に情報を伝達することが可能となった。
米トレーサビリティ
2009年(平成21年)に米トレーサビリティ法が制定
生産から小売販売や外食産業における食事の提供までの各段階を通じ、米穀事業者に米穀等の取引記録を作成・保存することを義務付ける。
対象となるのは、玄米や精米だけでなく、米菓や清酒等の米から作られた加工食品を含み、弁当の米飯やレストランて提供されるピラフなどの米飯類も対象
[対象事業者]
米穀事業者(米穀等の販売、輸入、加工、製造又は提供の事業を行う者をいい、生産者も含む)
[対象品目(指定米穀等)]
①もみ、玄米、精米等
②米粉、米穀を挽き割りしたもの、ミール、米粉調整品、米菓生地、米こうじ等
③弁当、おにぎり、米飯を調理したもの、発芽玄米、乾燥米飯等の米飯類(冷凍、レトルト、缶詰を含む)等
④もち、だんご、米菓、清酒、単式蒸留焼酎、みりん
[取引先の記録事項]
品名、産地、数量、搬出入の年月日、取引先名、搬出入の場所等を記録
[保存期間]
取引等の記録の保存期間は、紙媒体又は電子媒体で原則3年。
同時に消費者に米の産地情報を伝達することか義務付けられました。ただし、食品表示基準で従来、原産地表示が必要な玄米や精米に関しては、食品表示基準に従って表示することで、米の産地情報が消費者に伝達されたことになります。
なお、2017年(平成29年)に食品表示基準が改正され、原則として、すべての一般加工食品の重量割合第一位の原材料に原料原産地名の表示が義務付けられました。その中で、米トレーサビリティ法によって米の産地情報を消費者に伝達すべき食品については、米トレーサビリティ法が優先され、食品表示基準の新しいルールの対象外となることが明記されている。
ただし、以前から原料原産地表示が必要であった「もち」については、原材料のうち50%以上を占める米穀は食品表示基準で、それ以下の割合の米粉などは米トレーサビリティ法で米の産地情報を伝達します。
伝達の方法として、小売店では、米穀の加工品等の容器包装若しくは店内の立て札等に米の原産地を表示する。あるいは米の産地についての問い合わせ先の電話番号やウェブサイトのアドレスを表示する等の方法で消費者に伝達します。外食産業等においては、米飯類のみ米の産地情報の伝達が必要で、メニューや店頭に産地情報を掲示する、店員による口頭での説明等の方法により行うことができます。