「タバコをやめるなんて、とっくの昔にあきらめてますよ。でもね、周りに迷惑かけたくないですから、煙の出ないタバコに変えようかと思ってるんです」
「ダメダメ、あんなの嘘ですよ。煙の色を透明にしただけなんです。見えなくなっただけなんてすよ」
「えっ？ そうだったんですか。それは知りませんでした。じゃあ……せめてもの救いは、最近になって軽いタバコに変えたことくらいかな」
「そんなのにだまされちゃ困ります。タバコの横に小さな穴がいくつも空いてるでしょう。ニコチンとタール量を測る機械では、あの穴から空気も入るから煙が薄まって測定値が下がるんです。だけど実際吸うときには指や唇で穴を塞いでますから本当のニコチン量はもっと多いんですよ。それにね、軽いタバコは吸ったときに物足りないから、知らず知らずのうちに、肺の奥まで吸い込んで息を止めてるんです。そうすれば、強いタバコと同じくらいのニコチンを吸収できますからね。だからね、ＥＵではタバコにライトやマイルドって名前をつけるのを禁止してるんですよ」
