「五十代の主婦なんて、みんなパートに出て一生懸命働いているのが普通だよ。あんたのお母さんは、時間とお金も有り余り過ぎてるんだよね。何でもいいから世の中のためになることをやって、自分の幸運を世の中に還元しなさい。とまあ、そういうことを、私が帰ってから奈々の口からお母さんに言っておいてちょうだい」
「夫婦というのはね、互いに苦しい時代を乗り越えて、やっと絆が深まるものなんだよ。もうそうなったら恋やら愛やら関係ない。人間同士の助け合いだ。だから貧乏な夫婦だった私とおじいちゃんは、考えようによっては幸運だったのかもしれない。最近の若い人みたいに、結婚してからも双方の親から至れり尽くせりの金銭的援助があるようじゃあ、夫婦はだめになって当然だ。あんたのお母さんもどうかと思うよ」