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高瀬夏葉子の夫の堅太郎が脳溢血で急死した。
夏葉子は夫が死んだというのに、何の感情も湧いてこない。それどころか、夫の遺影を見ても知らない人のように思えてくる。夫への想いは冷め仮面夫婦になっていた。
舅姑は夏葉子に「高瀬家の嫁」として高瀬家を守ってくれること期待する。しかし、夏葉子にとっては苦痛でしかなかった。
高瀬夏葉子の夫の堅太郎が脳溢血で急死した。
夏葉子は夫が死んだというのに、何の感情も湧いてこない。それどころか、夫の遺影を見ても知らない人のように思えてくる。夫への想いは冷め仮面夫婦になっていた。
夫の会社の後輩三沢から電話があった。夫がホテルで亡くなったという。東京出張中だったはずだったが亡くなったのは地元のビジネスホテルだった。
夫の嘘には慣れっこだったけど、最後の最後まで馬鹿にされた。浮気でもしていたのだろう。
夫が亡くなったことで、夏葉子は自由になれると思っていたが、仏壇に線香をあげたいと自宅に訪れる人にうんざりする。姑も勝手に近所の人を呼んで家に上がり込む。
ある日、夫と同級生だった添島サオリという女性が線香をあげにきた。サオリは仏壇の前で手を合わせる時間が苛立つほど長かった。夫とはそんなに長く手を合わせる関係だったのかと夏葉子は嫉妬する。
形見分けするために夫の遺品を整理していると、夫の通帳が出てきた。サオリへ五万円や十万円の振り込みがされていた。亡くなった日、ホテルにいたのはこのサオリではないかと疑う。
舅姑が墓の費用を全て出してくれた。納骨の儀式の時、夏葉子の戒名らしきものと夏葉子の名がすでに入っており、文字には朱が入っていた。
自分が死んだらこの墓に入ることは決まっているのかと夏葉子は茫然とした。
夏葉子は夫が亡くなって、晴れて自由の身だと思っていたが、違うらしい。今もこれからも「高瀬家の嫁」なのだ。
舅姑は良識のあるいい人だが、これからも監視され続けられているようで夏葉子は耐えられなくなった。
舅姑は、自分たちが年老いたら夏葉子に面倒を見てもらうつもりだ。
工藤という好きな男性も現れたが、絶対にバレないようにしなければいけない。
工藤は夫の堅太郎とは正反対のタイプでおおらかさと優しさを兼ね備えていた。
夏葉子の父親が事情を知り、高瀬家との縁を切ってもらえるように東京から長崎へ来た。
父親は相手を批判するのはよくない。自分の要望を伝えろと言う。
夏葉子は、相手に遠慮しすぎて、自分をおさえすぎた。それが夫や舅姑たちとうまくいかなかったのだと思う。悪い人は一人もいない。言いたいことを言えなかっただけだ。