虚を突かれたように脇坂は背筋をぴんと伸ばし、両方の眉を上げた。「本気かね」 東野圭吾さんの希望の糸

最後に手紙を読んだのは翔太だった。彼は顔を上げ、二度瞬きした。「これ、どういうことだ」 東野圭吾さんのナミヤ雑貨店の奇蹟より

「失礼ですが、どちらさまでしょうか？」 えっ？ 山本の頭は空転した。 横山秀夫さんの動機より

「結婚してから、まあ、いろいろあったんだ。いろいろあって、彼女は郷里に帰ったんだよ。子供の遺骨を抱えてな」 硬く張っていた氷が割れたような、冷たい衝撃が胸の中に走った。 原田マハさんの旅屋おかえりより

しばらくして、藤嶋が妙に元気よく言った。取ってつけたような言葉が、空っぽの頭の中で、がらんがらんと音を立てた。 原田マハさんの旅屋おかえりより

智彦の喉仏が動いた。次に彼は唇を開いた。 「どういうことなんだ、それは」かすれた声で訊いた。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより

「じゃあ彼を気の毒だとは思ってないかい？」 「それは……」麻由子の瞳が不安定に揺れた。かすかな動揺を俺は感じとった。 「思ってるだろ？」 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより

じつは、といってから少し間を置き、相手の男は続けた。「古芝秋穂さんがお亡くなりになりました」 その言葉は、一旦伸吾の脳を素通りした。何を聞いたのか、わからなかった。 「もしもし。聞こえますか？ 古芝秋穂さんが……」男は先程と同じ台詞を繰り返した…

「いますぐ？」 質されて、私の胸はかすかに波打った。けれど私は、「ええ。いますぐに」と返した。 原田マハさんの本日は、お日柄もよくより

隣に立っている織絵ののどが、ひっ、とごく小さな音を立てて息を吸いこむのが聞こえた。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

織絵は、きゅっと口を結んだままで小宮山の顔を凝視した。小宮山は、織絵の顔にみるみる驚きの色が広がるのを見逃さなかった。小宮山の瞳には、驚きのさざ波が立った。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

ダイアナは目を見開く。身体中の血が暴力的にかき集められ、心臓目がけて迫ってくるのが自分でもわかった。ありえない。そんなの、ありえないー。 柚木麻子さんの本屋さんのダイアナより

それから数分後、彼女は美しい顔を凍ったみたいにこわばらせて戻ってきた。 東野圭吾さんの宿命より

現れたのは晃彦だった。美佐子は止めていた息を吐きだした。 「あなた……脅かさないでよ。びっくりするじゃない」 東野圭吾さんの宿命より

「……西浦富士子は、他界しました」 そう告げた途端、老女の顔からするりと表情が抜け落ちた。 三上延さんの江ノ島西浦写真館より

「いいからあんたは黙ってなさいッ」 父は眉間を弾かれた猫のようにぴくんとなる。 原田マハさんのキネマの神様より

あのときの戦慄。冷たい素手で心臓をわしづかみにされたような、あのひやりとした感覚。みつめるうちに発火して、めらめらと全身を包み込んだ炎のごとき衝撃。 ゲルニカ>。 ー私の運命を、人生を変えた、あの一作。 原田マハさんの暗幕のゲルニカより

心臓が、どくんと震えるのを感じた。その封筒は、どこからどう見ても、由緒正しい「遺書」にしか見えなかった。 原田マハさんの生きるぼくらより

「あーくそ、なんかもやもやするな」 喜怒哀楽の全部がごちゃ混ぜになったような感情。それが十倍くらいに薄められて漂っているような気がする。 しかしそんな気分の俺に、進は店から出るなりこんな言葉を投げつけた。 「バカ」 坂木司さんのワーキング・ホ…

「なんだ、寝てんの？ 風邪ひいちゃうよ」 そういいながら近づいたが、その足が止まった。異臭に気づいたからだ。 おそるおそる近寄っていった。周治の顔が見えた。その瞬間、何かの塊が喉の奥から出そうになった。 東野圭吾さんの夢幻花より

「川崎の男児連続殺人は知ってるな？ あの捜査をお前に預ける」 曾根は、涼しげに佇んでいた隣の男から発する空気の揺れを感じた。それはそのまま、巻島の心が動いた証だろうと受け止めた。 雫井脩介さんの犯人に告ぐ

乾いた土に水がしみ込むように、仁科の言葉は花恵の胸の奥へと広がっていった。こんな夢のようなことがあっていいものか。まさに奇跡だ。 東野圭吾さんの虚ろな十字架

図星をつかれショックを受けた表現 「あんた、何様？」 立ち上がっていた。テーブルの水が揺れてこぽれ、周囲の客が一瞬会話を止めて私たちを見た。頬が熱くなる。大地は冷静だった。私を見上げながら、「そう？」と笑いかける。 「ご同類でしょ、みずほちゃ…

裏切られショックを受けた表現 自分は、この人に憧れて、この人が言うように、本に書いていたように、テレビで言っていたように仕事をしてきた。香織は、板谷のてのひらの中で潰れていく紙パックを見つめる。 朝井リョウさんの世にも奇妙な君物語より

頭の中が混乱した時の表現 知子は、ひっくり返ったおもちゃ箱のようになっている頭の中を、何とか整理しようとする。 朝井リョウさんの世にも奇妙な君物語より

ショックを受けた時の表現をおすすめ小説から学ぶ 田名部は淡々と、松倉が都筑夫妻宅において夫妻を刺殺し、借用書や金銭を強奪したという旨の被疑事実を読み上げた。 松倉は真っ青になって、半開きの唇を震わせている。歯ががちがちと鳴る。 雫井脩介さんの…

その噂は無色透明の十代の心に大きな衝撃をもたらした。 垣谷美雨さんのリセットより 真奈の喉はやっぱり凍りついたように一言も声を出せなかった。 有川浩さんの塩の街より この子どこで伝染ったの。黙ってるなんて。伝染るかもしれないのに。整合のつかな…