白濁した目をふたりに向けて、せせら笑うかのように、バイラーの口が奇妙に歪んだ。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

ティムは振り向くと、織絵を見た。ふたりの視線が重なった。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

車椅子の上で力なくうずくまっていた人物は、ミイラのごとき老人だった。 落ち窪んで枯れた池のような顔の中で、ぎょろりと目が動く。その目は白濁して、見えているのかいないのかもわからない。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

隣に立っている織絵ののどが、ひっ、とごく小さな音を立てて息を吸いこむのが聞こえた。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

まっすぐな長い髪に、切れ長の涼しげな瞳。白いブラウスに、黒いブリーツスカート。ほっそりした両腕を組んで、こちらをじっと見据えている。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

ティムは車の窓を開けてみた。さわやかな朝の空気がたちまち吹きこむ。針葉樹の森のような、深々と青い匂いがした。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより

すらりと長身で、ウエストが締まった白い麻のパンツスーツを着ている。ウェーブのかかった長く豊かな濃い栗色の髪が、ふわりと風に揺れている。どことなくエキゾチックな顔立ち。 原田マハさんの楽園のカンヴァスより