横顔も悪くない……というか、かなりいい。眼は切れ長だが、優しげな潤みを帯びている。薄い唇やすっきりした顎には過度な雄々しさもなければ、逆の脆弱さもなく、ただ、眺める対象としての心海よさたけがあった。 雫井脩介さんのクローズド・ノート

首から肩にかけてのラインがきれいだった。そのあたりを撫でれば、さらりとした皮膚の感触とともに、緩やかな筋肉の起伏が手のひらに馴染むのではないかと思われるような……そんな、硬質さと繊細な滑らかさが調和しているようなシルエットだった。 雫井脩介さ…

そのまま四つ角を曲がっていく。 風を受けた白いシャツの背中が帆のようにふくらんだ。 そして、私の視界から消えていった。 雫井脩介さんのクローズド・ノート

虚ろな十字架 (光文社文庫) 作者:圭吾, 東野 光文社 Amazon おすすめ度 4.2 感動する ☆☆☆☆ 笑える スリル ☆☆☆ ほっこり ビックリ ☆☆ 先が気になる ☆☆☆☆☆ ほのぼの ためになる ☆☆☆☆ 心に残る ☆☆☆☆☆ 切ない ☆☆☆☆☆ 怖い ☆ 重い ☆☆☆ すいすい読める ☆☆☆☆☆ 東野圭…

この言葉は沙織の胸に鋭く突き刺さった。その剣先は心の奥底まで達し、長年秘め続け、もはや自分でも手がつけられなくなっていた古傷に触れた。そのあまりの痛みに目眩がしそうになった。 東野圭吾さんの虚ろな十字架

短い髪、ぴんと背筋を伸ばした姿勢、真っ直ぐに結ばれた唇、いずれもが意志の強さを示しているようだった。妥協を許さない気配を発していた。 東野圭吾さんの虚ろな十字架

乾いた土に水がしみ込むように、仁科の言葉は花恵の胸の奥へと広がっていった。こんな夢のようなことがあっていいものか。まさに奇跡だ。 東野圭吾さんの虚ろな十字架

仁科は俯き、唇を真一文字に結んだ。眉間を寄せた顔には苦悶の色が滲んでいる。 東野圭吾さんの虚ろな十字架

伏し目がちだが、そこに宿る光には固い決意が潜んでいるようだった。一体何が、この人物の倫理をこれほどまでに堅牢にしているのだろう、と中原は思った。 東野圭吾さんの虚ろな十字架より

「富士山といえば、樹海もありますね。行かれたことはありますか」 「樹海……ですか」 一瞬、仁科の目に宿っていた光が揺れたように見えた。彼は視線を宙に彷徨わせた後、中原に目を戻した。 東野圭吾さんの虚ろな十字架

怒った時の表現 「だったら、どうして別れないのよ」妙子は口を尖らせる。 「だから、それだけ花恵さんのことが好きだってことじゃないの」 妙子の眉尻が吊り上がった。「なんでよっ。あんな女のどこがいいの？」 「知らないよ。あたしに訊かないでよ」 東野…

閑静な住宅街の表現 商店街を抜け、道を何本か曲がると、町の雰囲気ががらりと変わった。緑が豊かな住宅街で、洒落た民家が増えてくる。 東野圭吾さんの虚ろな十字架