室内の表現、描写をおすすめ小説から学ぶ
明かりのスイッチがわからず壁を探っていたら、横から直子が手を伸ばしてきてパチンと入れた。蛍光灯が一度瞬きした後、白い光が部屋に充たされた。 秘密 (文春文庫) 作者:圭吾, 東野 文藝春秋 Amazon
四日間の奇蹟 (宝島社文庫) 作者:浅倉卓弥 宝島社 Amazon 今藤本呼んで来ます。と僕らを招じ入れた。部屋は応接室といった趣で、茶色いソファに同系色のテーブルという調度だった。
外から見ると漢字の田の字に見える三つの窓は閉じられ、チェック柄のカーテンが引かれていた。その窓の位置に合わせて四人掛けのテーブルと椅子が並んでいる。どちらも床と同様に濃い焦げ茶色だ。テーブルに載せられたメニュースタンドも木製だった。 東野圭…
松宮は、すっと鼻から息を吸い込んだ。漆喰の壁に包まれた空間には、香ばしくて甘い匂いが染みこんでいるようだ。 東野圭吾さんの希望の糸
置かれている調度品は外国のアンティークらしいが、漆喰を模した壁は和風をイメージしたものに違いない。洋食は日本の食文化だという自負が示されているように思えた。 東野圭吾さんの流星の絆より
待ち合わせの場所は、青山通りから少し外れたところにあるカフェだった。木をふんだんに使った内装は、絞った照明の下でも暖かみを感じさせた。静奈は初めて入った店だが、いかにも行成が好きそうな雰囲気だと思った。 東野圭吾さんの流星の絆より
平光さんが扉を開けると、照明がぎりぎりまでしぼられた薄暗い空間が広がっていた。漆喰の白い壁に、味のある焦茶色のフローリング。間隔を広めに取ったソファ席と、壁に向かう形でカウンター席が作られている。 凪良ゆうさんの流浪の月より
玄関からでも内部の散らかり具合が分かる。脱げ捨てられたままの衣服、コンビニ弁当の容器、発泡酒の空き缶、ジャンクフードの欠片、箱から溢れたゴミ、何かの液体が凝固した跡、そして床に溜まった埃と毛髪。 中山七里さんのヒポクラテスの憂鬱より
赤坂の料亭のある。檜の柱は黒光りし、山水画のかかった床の間があり、欄間には松竹梅が透かし彫りされ、漆仕上げの座卓を挟んでさくらと俺がいる。もちろん個室である。たった二人なのに十二畳という贅沢さだ。 葉桜の季節に君を想うということより
リビングルームの床は板張りで、中央に木の皮をはいだだけの太い柱が立っている。その柱は吹き抜けになった天井まで伸びていた。 柱の横に大きな木製のテーブルがあり、藤間夫妻が向き合うように座った。部屋の一画はL字型のカウンターテーブルで囲まれたキ…
玄関から中に入って、すぐ右側にある和室に通された。小さな卓袱台と茶箪笥があるだけの質素な部屋だった。掃除が行き届いている。 東野圭吾さんの使命と魂のリミットより
四階で降りると、フロアの薄暗さに戸惑った。共有スペースのメンテナンスが充分なされていないのか、廊下を照らす蛍光灯は明滅を繰り返して今にも切れそうだ。 中山七里さんの死にゆく者の祈りより
教会の礼拝堂を改築した病院とあって、天井は高い。ぐるりと見渡せば、木製の列柱や尖頭アーチ窓などがが見える。これらは、まさに礼拝堂の名残だ。 関口尚さんのパコと魔法の絵本より
四つ並んだドアの一番端が、篠崎の部屋の入り口だった。崇史が中に入ると、埃と黴(かび)の臭いがした。かすかにカレーの匂いも混じっている。壁にしみついているのだろう。 雅美が蛍光灯のスイッチを入れた。六畳の和室が目の前に現れた。壁際にはカラーボッ…
久美さんと私は、ワダカマの後に続いて施設の中へ入っていった。煮魚のような匂いと消毒液の匂い。老人ホームに足を踏み入れたのは初めてだったが、想像以上にわびしげな印象だった。 原田マハさんの本日は、お日柄もよくより
病院の廊下は灯が落ちていた。 非常口を知らせる緑色の常夜灯と、火災報知器の赤いランプが暗い廊下に滲んでいる。 横山秀夫さんの顔(FACE)より
少しだけ開いた窓から、かすかに風が忍び込んでくる。淡いベージュのカーテンが、ふわりと丸みを帯びて、風のかたちに揺れている。 原田マハさんの翔ぶ少女より
ふすまが少しだけ開いていて、そこからとなりの部屋の明かりが漏れ、ふとんの上に細長い筋を作っている。 原田マハさんの翔ぶ少女より
かつては理事や役員が使用していたという四階の廊下には、色こそくすんではいるが赤い絨毯が敷き詰められていた。歴史を経た腰壁は重厚に輝き、天井に列なる曇りガラスの淡い証明を移しこんでいた。しんと静まり返っているのは、ふんだんに使用された大理石…
データ化なんて技術のない時代から十七年間蓄積された書類は、絶妙なバランスでオブジェのように積み重なっている。そのすべてを翌日までにシュレッダーにかけなければならなかった。 原田マハさんのキネマの神様より
座椅子の前に古ぼけた卓袱台がある。卓袱台の向こう側にはカラーボックスが横置きにしてあり、その上にテレビが鎮座している。横にはDVDプレイヤーと、山と積まれたDVDケース。 しみだらけの天井から下がっている蛍光灯。古い箪笥がひとつ。引き出しに貼って…
白いタイルのくすみ具合も、いくらか波打った床も、太い円柱の艶も、人間と同様ごく自然に年老いていた。 浅田次郎さんのおもかげより
愛想のない廊下が続く。正一がどうなろうと、これでいっそう病院が嫌いになるのはたしかだと思った。 浅田次郎さんのおもかげより
店屋物の器がどの部屋の前にも堆(うずたか)く積まれた廊下を歩き、事務所のインターホンを押すと、ドアの上に取り付けられた監視カメラに向かって吾郎は笑いかけた。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より
幌舞駅は大正時代に造られたままの、立派な造作である。広い待合室の天井は高く、飴色の太い梁が何本も渡されていて、三角の天窓にはロマンチックなステンドグラスまで嵌まっていた。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より
差し入る冬の日に導かれるように、海老沢は縁側から上がりこんだ。四畳半と六畳の二間に小さい台所のついた、昔ながらの家作である。家具も調度品も、老人が生きて行くために不必要なものは何もなかった。茶箪笥と旧式テレビ。小さな座卓。それだけである。 …
自動ドアをむりやりこじ開けて、二人は生暖かい病棟に入った。灯はすっかり消えており、非常灯の緑色の光だけが、磨き上げられた廊下を冷たく照らし出していた。 こだまする靴音に気がねしながら長い廊下を折れ曲がると、待合室に出た。 浅田次郎さんの日輪…
狭い台所には食器棚と冷蔵庫、カップ麺やスナック菓子が詰めこまれた段ボールが積み上げられ、人ひとりが立っているのがやっと、というようなありさまだ。その台所を中心に、奥には母が寝起きする六畳間、右手には人生がろう城する四畳半、左手には申し訳程…
積み上げられたDVDケース、空になったカップ麺の容器、スナック菓子の空き袋、丸めたティッシュ、脱ぎっぱなしの靴下、この世の中でもっとも無価値で役に立たないものの累積の中に、敷きっぱなしの布団。 原田マハさんの生きるぼくらより
ゲストルームのドアを開ける。部屋は眠れぬ街の虹色に染まっていた。 浅田次郎さんの椿山課長の七日間