2021-08-08から1日間の記事一覧
安奈の意識が戻ったら連絡を寄越すように。そう言い残して、七尾は廊下の闇に溶け込んでいった。 横山秀夫さんの顔(FACE)より
病院の廊下は灯が落ちていた。 非常口を知らせる緑色の常夜灯と、火災報知器の赤いランプが暗い廊下に滲んでいる。 横山秀夫さんの顔(FACE)より
瑞穂は席を立った。膝の間接が小さく鳴った。 横山秀夫さんの顔(FACE)より
瑞穂は二人の会話の谷間に落ち込んでしまった格好だった。微かに妬ける。D県警の婦警なら誰だって七尾に認められたい。 横山秀夫さんの顔(FACE)より
瑞穂は俯いた。拍子に涙が畳を打った。 横山秀夫さんの顔(FACE)より
「何の用だ?」 真正面から見据えられた。 瑞穂は渇ききった喉から言葉を絞り出した。 「お願いがあって参りました」 横山秀夫さんの顔(FACE)より
切れ長の細い目が瑞穂に向いた。やや下膨れで起伏に乏しい顔。それを補うかのように化粧はきつかった。タートルネックの白いシャツにジーンズ地のオーバーオール。前髪に金色のメッシュを入れ、耳にはピンク色のピアスが光っていた。 横山秀夫さんの顔(FACE)…