声の表現、描写をおすすめ小説から学ぶ
渡瀬は表情を変えない。しかしその声には血が滲んでいる。 テミスの剣 (文春文庫) 作者:中山七里 文藝春秋 Amazon
運転席側から回り込んできた女が空気を震わすような張りのある声を上げた。すると、ぽっかりと口を開けたように見える建物から、ジーパン姿の若い女が姿を現した。 乃南アサさんのしゃぼん玉
「そのへんにしとけよ」 低い声が床に重く落ちた。 朱野帰子さんのわたし定時で帰ります
「小学校時代からのお付き合いという話なんですが、野々口さんから見て、日高さんはどういう方でしたか」女性レポーターが、けたたましい声で質問してくる。 東野圭吾さんの悪意より
お父さんの声は、モカシンに使われているやわらかな 革のように低くて湿ったいた。 凪良ゆうさんの流浪の月より
文がわたしを呼ぶ。甘くて冷たい磨りガラスみたいな声だ。 凪良ゆうさんの流浪の月より
「帰らないの」 甘くてひんやりしている。半透明の氷砂糖みたいな声だった。 凪良ゆうさんの流浪の月より
「ニース一の花園から、花を届けてくれたのは君かね?」 チェロの響きにも似た、しみ渡る声。 原田マハさんのジヴェルニーの食卓より
「……え……」 ため息のような声が、ひとかけら、めぐみさんの唇からこぼれ落ちた。 原田マハさんの丘の上の賢人 旅屋おかえりより
「俺だ」藤田の声は黒く塗りこめられていた。 堂場瞬一さんの疑装より
「部長、お気持ちを聞かせてください」 二渡は、狭まった気道を無理やり開く思いで言った。 尾坂部は黙っていた。 横山秀夫さんの陰の季節より
「ごめんなさい、でも、気になるんです。あの子の持ち物が」 体の動きに合わせて、声が毬(まり)のように跳ねている。 岡崎琢磨さんの珈琲店タレーランの事件簿より
「いつも夕方からこんな時間まで面倒みてくれてありがとうね。そうだ、何ならお茶でも飲んでいかない?」 久仁子はドアを開けたまま艶然と笑い掛けてくる。 声は粘着性の糸ようだった。 笑顔は妖しい誘蛾灯のようだ。 中山七里さんの護れなかった者たちへより
あ……あ……あ……あ 紫紋の口が、全身が、わなわなと震えだした。開いた口から、声にならない声がこぼれ落ちる。 あ……あ……あ……あ 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより
硬い声が耳に吹き込まれた。本部警務課の井岡係長。貝瀬の直属の部下だ。 横山秀夫さんの動機より
「練習ができないと困るんです」 「できるじゃないの。決められた時刻まで」相変わらず金属的な声で喚き散らしてくる。 俺はうんざりした顔を作った。「だからそれじゃ足りないんです」 東野圭吾さんの同級生より
「キャプテンは誰?」サードベースのそばに立ち、黒板をひっかくような声で中年女性教師は訊いた。 東野圭吾さんの同級生より
「おい、西原」灰藤は地獄の底から聞こえてくるような、低い声を出した。「おまえ、そんなことをいう資格があると思ってるのか。宮前は死んだ、そもそもの原因は何だと思ってるんだ」 東野圭吾さんの同級生より
父親はもそもそと唇を動かした。と彼は言った。しゃべるというのではなく、喉の奥にある乾いた空気をとりあえず言葉に出してみたといった風だった。 村上春樹さんのノルウェイの森より
「帰ってくるんでねえよ」重たく、湿った母の声が響く。 原田マハさんの旅屋おかえりより
「君の学校の生徒さんは、皆さんカードゲームが得意ですか」 突拍子もない質問に、「は?」と頭のてっぺんから抜けるような声で反応してしまった。 原田マハさんの旅屋おかえりより
「……脅す気か」急に父の声が低く沈んだ。深い井戸の底から聞こえてくるような声だった。 東野圭吾さんの分身より
「一体どういうことなんです。何だって今さらそんなこと訊くんですか」慎介は声に少し苛立ちを含ませていった。 東野圭吾さんのダイイング・アイより
細く華奢な身体つきのわりには低い声だった。フルートの低い音を聞いたような余韻が、慎介の鼓膜に残った。 東野圭吾さんのダイイング・アイより
「ふつうは五年から十年というところだよ」隣の青地が金属的な声で補足した。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより
「将来性、発展性、実現性、その他もろもろの面から見て、そう判断したんだ。これにはもう変更はない。決定したことだ」真っ直ぐに崇史の目を見つめながら、大沼は声優のように明瞭な口調でいった。有無を言わせない迫力も、その声は備えていた。 東野圭吾さ…
しかし彼女はすぐに微笑み、「よろしく」といった。高すぎることも低すぎることもない、耳に馴染みやすい声だった。 東野圭吾さんのパラレルワールド・ラブストーリーより
「えー、またあ? お母さんにいえば?」由里奈は不機嫌な思いを声に載せた。 東野圭吾さんの禁断の魔術より
「二流二流って……新郎新婦が選んだ場所なんですから。いいじゃないですか」 トゲを二倍増しにした声で、わざと突っぱねた。女の人は、ふむ、とちょっと感心したように鼻を鳴らした。 原田マハさんの本日は、お日柄もよくより
体温を奪いさるほど冷たい声で、凜子が言った。 原田マハさんの総理の夫より