2022-06-11から1日間の記事一覧
古手川に諭されると、久瑠美は憤懣やる方ないように唇を尖らせる。 中山七里さんのヒポクラテスの憂鬱より
玄関からでも内部の散らかり具合が分かる。脱げ捨てられたままの衣服、コンビニ弁当の容器、発泡酒の空き缶、ジャンクフードの欠片、箱から溢れたゴミ、何かの液体が凝固した跡、そして床に溜まった埃と毛髪。 中山七里さんのヒポクラテスの憂鬱より
真琴がついと顔を上げると、正面に古手川が立っていた。解剖を見守る古手川の目は静かだが、瞳の奧に熾火(おきび)のような鈍い光が見える。 中山七里さんのヒポクラテスの憂鬱より
「子供が憎いから殺す。カネ目当てで殺す。それなら胸糞は悪いけど、理由がある分まだマシだ。でもな比嘉美礼という女の子は大した理由もなく、ただパチンコよりも親の興味を引かなかったから殺された。それも積極的な殺し方じゃない。車内に置き去りにされ…
供述調書を作成している最中も、古手川は腹が立って仕方なかった。親の無責任に対する義憤でもなければ美礼への同情でもない。もっと直截(ちょくせつ)な憤怒が額の辺りから弾け出そうな感覚だった。 中山七里さんのヒポクラテスの憂鬱より
根元まで染め切れていない金髪にジャージ姿。典型的なヤンキー風のためか、顎に蓄えた髭も貧相な顔にはひどく不釣り合いだった。 中山七里さんのヒポクラテスの憂鬱より