人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

2021-01-28から1日間の記事一覧

雪あがりの空は絵具をまいたような青さで、

仙次は四方を囲むような幌舞の山を見渡した。雪あがりの空は絵具をまいたような青さで、朱い国鉄色のキハが良く似合っていた。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より

澱のように凝り固まっている記憶だった

それらは古ぼけた制服の胸ふかく、たとえば機関車の油煙の匂いや炭ガラの手ざわりとともに、澱のように凝り固まっている記憶だった。ひとつの出来事を語るたびに、乙松の心は確実に軽くなった。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より

薄暗い台所に百合の花のようなセーラー服を背に向けて

薄暗い台所に百合の花のようなセーラー服を背に向けて、少女は水を使い始めた。 「ねえ、おじさん。もっと話きかせて」 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より

ガラス窓の外で、雪が唸り始めた

ガラス窓の外で、雪が唸り始めた。 「やあや、ふぶいてきちまったなあ。ゆっくりしてったらよかんべ。横なぐりに吹いてるし」 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より

少女は花びらのような唇をすぼめて

少女は花びらのような唇をすぼめて、汁粉をすすった。ときどき賢そうな眉をひそめて、じっと乙松を見つめる。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より

辛い思い出を綿入れの懐にしまい

辛い思い出を綿入れの懐にしまい、乙松は襟をかき合わせて俯いた。 春になってポッポヤをやめたら、もう泣いてよかんべか、と思った。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より

広い待合室の天井は高く、飴色の太い梁が何本も渡されていて

幌舞駅は大正時代に造られたままの、立派な造作である。広い待合室の天井は高く、飴色の太い梁が何本も渡されていて、三角の天窓にはロマンチックなステンドグラスまで嵌まっていた。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より

厚ぼったい国鉄外套の肩に雪を積もらせ

厚ぼったい国鉄外套の肩に雪を積もらせ、濃紺の制帽の顎紐をかけて、乙松はホームの先端に立ちつくしている。いちど凛と背を伸ばし、軍手をはいた指先を進入線に向けきっかりと握り示す。 浅田次郎さんの鉄道員(ぽっぽや)より