壁には洒落た絵画が飾られており、その隣には新聞のスクラップが額装されて「山形地検、副知事汚職にメス 独自捜査実る」と見出しが躍っていた。当時三席だった殿部が主任を務めた事件らしい。
その他にも大判のスナップ写真が飾られており、その一枚には、テレビでよく見かける女優と並んで殿部と検事総長が笑顔で収まっていた。
「女性検事が主人公のテレビドラマシリーズがあるんですよ。撮影前に表敬訪問された時のものだそうです」
お茶を出してくれた事務官が、富永の視線に気づいて説明した。富永にはその神経が理解できなかった。そこまでして実績を誇示するのは、本人に自信がない証拠だと思う。そして、過去の栄光にすがる者は、いずれ行き詰まる。
こうはなりたくないものだ。