クチナシは葉にも蕾にも害虫がつきやすい。祖父母のクチナシも植えた翌年、葉を青虫に丸坊主にされかけて大騒ぎになった。それ以来、祖父母は毎年、幼虫や卵を駆除するのに躍起になっていた。幼い俺も手伝わされて、おかげで大嫌いだった虫も平気で触れるようになった。
「まあ、幸せは手間をかけんと手に入らんもんやから……」
「え?」ジジイが怪訝そうに俺を見た。
「害虫駆除、俺が面倒くさがってたら、うちのじいちゃんとばあちゃんがそう言うんです。クチナシの花言葉って、幸せを運ぶとか、私は幸せっていうらしいから、それに引っ掛けて」