おすすめ度 3.4
無名の陶芸家省造が、偶然生み出した最高の青磁の壺。
それが売られ贈られ、そして盗まれして十余年後に作者と再会する。
その間、この青い壺はどんな人間の手を渡り歩いたのか。
定年後の虚無感を感じる夫婦、相続争いに悩む娘、老いて目が不自由な母親を不憫に思い母親と暮らすと決めた娘、戦前の上流社会を懐かしむ老婆、四十五年ぶりにスペインに帰郷する修道女、観察眼に自身を持つ美術評論家、青い壺を手にした、それぞれの人間の奥深くドロドロした心理などを短編で小気味よく鮮やかに描かれています。