薫が指差す方向には、水平線に沈みかけたオレンジ色の太陽が輝いていた。その光は海面にひと筋の光を映し出し、まっすぐにこちらへ向かって走っている。それはまるで、三人の立つ位置から夕陽まで橋がかかっているように見えた。
海辺へたどり着いたのは、海が金色に染まる時間だった。
「すごい……」
砂浜に降り立った真奈が、立ち尽くしたまま息を飲んだ。綺麗、と吐息のように呟く。
黄金を撒いているかのように光を反射する一面の水。
橋の上から見た、暗い海が目に浮かぶ。
限りなく続く一枚岩のような、暗い海
車を降りて角力灘(すもうなだ)に沈む夕陽を岸壁に並んで眺めた。見る見るうちに青い海が紅色に染まっていく。天国にいるのではないか。海に浮かぶ島影が幻想的で美しく、この世の物とは思えなかった。