海の描写をおすすめ小説から学ぶ
コールタールみたいに真っ黒な海原から、さざ波の音が押し寄せてくる。 森沢明夫さんのおいしくて泣くときより
たぷん。たぷん。 と、黒い海水が堤防にぶつかる甘い音が夜風に溶ける。 森沢明夫さんのおいしくて泣くときより
潮風にさらされた木の電柱、痛みのないアスファルトの道が島の情緒に溢れている。開けた空と海、碧(あお)く透きとおる浅瀬。砂浜がびっくりするほど狭い。 七月隆文さんの天使は奇跡を希うより
ずっと遠くに、鈍色の海が静かに横たわっている。 線香の青い煙がすがすがしい香りを放って、冷たい風に流されていく。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより
目の前が急に拓けた。なだらかな斜面に苔むしたたくさんの墓石があった。背中を丸めた群衆のように密集して立っている。彼方に海か浮かんで見え、群青の帯を作っている。その手前には尽果の集落、家々のトタン屋根や瓦屋根が初夏の光を弾いて光っている。 原…
海は凪いでいて、透き通った日差しを反射してちらちらと蠢(うごめ)いていた。じっとみつめていると、それはどうも生き物のように感じられるのだった。 原田マハさんのまぐだら屋のマリアより
水の中では、母さんと千代子さんが歓声を上げながらふざけていた。地元の子供たちと一緒に、宝が水をかけ合いっこしている。その度に、水面が光のビーズをまき散らしたように輝いた 小川糸さんのにじいろガーデンより
薫が指差す方向には、水平線に沈みかけたオレンジ色の太陽が輝いていた。その光は海面にひと筋の光を映し出し、まっすぐにこちらへ向かって走っている。それはまるで、三人の立つ位置から夕陽まで橋がかかっているように見えた。 垣谷美雨さんのリセットより…