人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

2022-03-05から1日間の記事一覧

ずれ落ちて、鎖骨の凹みをしどけなく覗かせていたニットの襟を摘まんで元に戻した

美涼は、「趣味」で働いているという言葉通り、嬉しそうに白い歯を見せた。そして、ずれ落ちて、鎖骨の凹みをしどけなく覗かせていたニットの襟を摘まんで元に戻した。小さなダイヤのネックレスが、照明を反射して装飾音のように煌めいた。 平野啓一郎さんの…

霜のついたグラスに、注ぐ先から細かに泡立ってゆくほどよく混ざっていて

肝心のウォッカ・ギムレットは、霜のついたグラスに、注ぐ先から細かに泡立ってゆくほどよく混ざっていて、よく冷え、よくアルコールの角が削れていて、風味にまろやかな輝きが感じられた。 平野啓一郎さんのある男より

中高のすっきりとした顔で、グレーのカラーコンタクトの入った眸(ひとみ)が、唇と共に艶々していた

スタッズのついた黒いキャップを被っていて、耳にかけた明るめの髪が、華奢な肩に垂れている。中高のすっきりとした顔で、グレーのカラーコンタクトの入った眸(ひとみ)が、唇と共に艶々していた。 美人だな、と城戸は正直に思った。ゆったりとした黒いニット…

グラスに注いだウオッカは、とろみがつくほどよく冷えていて、口の中に甘い熱のような刺激を広げた

壜(ビン)についた霜が、握りしめた手のかたち通りに水になって垂れた。グラスに注いだウオッカは、とろみがつくほどよく冷えていて、口の中に甘い熱のような刺激を広げた。鼻を抜ける匂いに、子供の頃に、初めて「アルコール」というものを意識した予防接種…

地平線に熔け残った最後の光が尽きるのは

窓の色はビル群を抜ける度に夕暮れに染まってゆき、地平線に熔け残った最後の光が尽きるのは、うっかり見逃してしまうほど速かった。 平野啓一郎さんのある男より

勇を鼓したように腕を伸ばして、テーブルの上の里枝の手の甲を握った

大祐は、じっと里枝を見つめていたあと、少し俯いて、微かに二度頷いた。店の客が減ってゆき、鰻重のおぼんが下げられた。二人とも黙っていた。やがて大祐は、勇を鼓したように腕を伸ばして、テーブルの上の里枝の手を甲から握った。優しく覆った、と言った…

笑って指の腹で頬を拭った

「上手ですね。……ごめんなさい、よく知っている場所だから、昔のことを思い出したみたいで、……」と笑って指の腹で頬を拭った。 平野啓一郎さんのある男より

表面張力を破って、溢れ出してしまったかのようだった

遼と父の死の悲しみだけでなく、帰郷して以来、知らず識らずに募っていた自身の境遇への感傷が、最後のほんの些細な数滴のために、表面張力を破って、溢れ出してしまったかのようだった。 平野啓一郎さんのある男より

街路樹の茂みで啼いている蝉の声が、蒸し暑い空気と共に雪崩れ込んできて

店のドアが開くと、こんな日にも街路樹の茂みで啼いている蝉の声が、蒸し暑い空気と共に雪崩れ込んできて、すぐに閉め出された。 平野啓一郎さんのある男より

分厚い雲が町全体を不穏に覆っていて、稲光に遅れる地響きの轟音

この日も激しい雨だったが、三時を過ぎた頃、ひょっこりと、彼は店を訪れた。 分厚い雲が町全体を不穏に覆っていて、稲光に遅れる地響きの轟音が、里枝を驚かせた。 平野啓一郎さんのある男より

疑装 堂場瞬一 おすすめ小説

堂場瞬一さんの疑装 おすすめ度 2.8 感動する ☆☆ 笑える ☆ スリル ☆☆☆ ほっこり ビックリ ☆☆ 先が気になる ☆☆ ためになる ☆☆ 心に残る ☆☆ 切ない ☆ 怖い ☆ 重い ☆☆ すいすい読める ☆☆ あらすじ 西八王子署管内で日系ブラジル人の少年が保護された。 鳴沢は心…