大祐は、じっと里枝を見つめていたあと、少し俯いて、微かに二度頷いた。店の客が減ってゆき、鰻重のおぼんが下げられた。二人とも黙っていた。やがて大祐は、勇を鼓したように腕を伸ばして、テーブルの上の里枝の手を甲から握った。優しく覆った、と言った方がいいかもしれない。思いがけないことだったが、里枝は、そのチェーンソーの仕事でまめだらけの掌のぬくもりに慰められ、うれしいと感じた。彼がしなければ、自分の方から同じようにしていたかもしれない。
大祐は、じっと里枝を見つめていたあと、少し俯いて、微かに二度頷いた。店の客が減ってゆき、鰻重のおぼんが下げられた。二人とも黙っていた。やがて大祐は、勇を鼓したように腕を伸ばして、テーブルの上の里枝の手を甲から握った。優しく覆った、と言った方がいいかもしれない。思いがけないことだったが、里枝は、そのチェーンソーの仕事でまめだらけの掌のぬくもりに慰められ、うれしいと感じた。彼がしなければ、自分の方から同じようにしていたかもしれない。