2020-12-19から1日間の記事一覧
いままで一度たりともそんなに激しい口調で夫に責められたことがなかったからか、菜穂は見る見る意気消沈していった。 彼女の白い顔に重苦しい雲がかかるのを認めて、一輝は、はっとした。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
樹は、静謐で豊かな美を秘めた女であった。木綿の無垢ではない。白絹である。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
振り向くと、白根樹が立っていた。薄闇の中で、瞳を青白く輝かせ、菜穂をみつめている。 背筋をぞくりと蠢(うごめ)くのを感じた。樹が妙に透き通って見える。物の怪(け)じみた美しさだった。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
振り向くと、白根樹が立っていた。薄闇の中で、瞳を青白く輝かせ、菜穂をみつめている。 背筋をぞくりと蠢(うごめ)くのを感じた。樹が妙に透き通って見える。物の怪(け)じみた美しさだった。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
菜穂は顔を上げて樹を見た。能面のような表情のない白い顔が一心に菜穂をみつめている。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
菜穂はうつむいたまま顔を上げない。よく磨かれた紫檀(したん)の座卓にさかさまに映っている顔には表情がなかった。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
三人が白々しい会話を交わしている間、白根樹は、薄闇の中に月のように白い顔を浮かべて、唇を閉じたままだった。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
樹は、意識的に誰の顔も見ないようにしているようだったが、ときおり濡れたように光る瞳をちらと菜穂のほうへ向けた。そしてほんの少し緩めて微笑を浮かべるのだった。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
樹は、意識的に誰の顔も見ないようにしているようだったが、ときおり濡れたように光る瞳をちらと菜穂のほうへ向けた。そしてほんの少し緩めて微笑を浮かべるのだった。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
苦酸っぱい嫌悪感がこみ上げてきた。まるで自分が照山にいたぶられ、拘束されているような気がした。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より
樹の表情には、霞のように不審感が広がっていた。それを払拭しようとして、菜穂は重ねて言った。 原田マハさんの異邦人(いりびと)より