人生も後半戦! これから先も楽しもう!

人生も後半戦になったら、これまでの生き方に後悔することもあります。しかし、後悔しても仕方ない。この先楽しく生きるためにいろんなことに挑戦

スピーチを学ぶ 原田マハさんの本日は、お日柄もよく、より

 

 スピーチの極意 十箇条

 

一、スピーチの目指すところを明確にすること。

 

二、エピソード、具体例を盛りこんだ原稿を作り、全文暗記すること。

 

三、力を抜き、心静かに平常心で臨むこと。

 

四、タイムキーパーを立てること。

 

五、トップバッターとして登場するのは極力避けること。

 

六、聴衆が静かになるのを待って始めること。

 

七、しっかりと前を向き、右左を向いて、会場全体を見渡しながら語りかけること。

 

八、言葉はゆっくり、声は腹から出すこと。

 

九、導入部は静かに、徐々に盛り上げ、感動的にしめくくること。

 

十、最後まで、決して泣かないこと。

 

 

 会場が静まり返るのを、壇上の社長は待っている。

 潮騒か引くようにざわめきがやむ瞬間を逃さずに、最初の言葉を発する。それが美しいスピーチのセオリー。第一声は、印象的に。最初の数十秒で、聴衆の心をつかむ。

 

 

「私だって、いつもそう。スピーチするのに緊張しない人なんて、いないのよ。逆に、緊張感のないスピーチは、聴衆を飲みこむことなんて絶対できない。だから、いいのよ。気持ちよく緊張して挑めば」

 

 

 スピーチするとき、やたら語尾を伸ばす人ってけっこういる。久美さんに言わせると、「おじさんに顕著」だそうだ。悠長に聞こえてしまうにもかかわらず、語尾を伸ばすことで、なんとなくスピーチっぽくなる気がするらしい。聴いてるほうは、あーとかいーとかうーとか、母音ばかりが耳に残ってしまって、何を言ってるのか判然としない。久美さん直伝「絶対にやってはならないスピーチの悪癖」の中に入ってたな。

 

 

 スピーチの導入部も、あくまで静かに始める。始め方はさまざまだが、「ただいまご紹介にあずかりました」とか「ひとことお祝いを述べさせていただきます」のような無駄な枕詞は極力避ける。いきなりエピソードから始めてもいい。結論を先に言ってしまってもいい。とにかく、最初のフレーズがどんなふうに聴衆の耳に届くか。それでそのスピーチの印象が決まる。聴衆を煽る激しい言葉や、あまりにも力強いフレーズは避ける。あくまでも、静かに、けれど心を打つ入口を作る。

 

 

「はい、これ。スピーチの大基本」

 私の目の前に、ぺらっと差し出された紙に書いてあった一文字。

 静

「しずか……?」

 私がつぶやくと、久美さんは微笑してうなずいた。

「スピーチの原稿を始めるとき、そしてスピーチを始めるとき。心にこの文字を浮かべる。それが基本です」

 まず、心を平静にして、思い浮かべる。このスピーチの目指すところはどこにあるのか。

 

 

 フレーズの冒頭に、「えー」とか「あー」とか付けるのは、しゃべるのに自信がない証拠。

 新郎がいかに優れた人物かを語るのに、「優秀」「貢献」などと言っても、抽象的すぎて伝わらない。

 

 

「それから、お祝いを繰り返しすぎ。『この度は、ご結婚おめでとうございます。また、ご両家のご親族の皆さまがた、このたびはまことにおめでとうございます。心よりお祝いを申し上げます。……中略』……わたくしといたしましては、このよき日を、ご臨席の皆さまがたとともに、祝したいと思う次第でございます』って、出だしの一分でお祝いを四回も言ってる。で、また聴衆の耳が離れる。なんだこいつ、おんなじことばっか言ってるよ、ってね」

 

 

「まず、出だしね。『ご紹介にあずかりました、鈴木でございます』。これは日本人がスピーチするときに、ついついやってしまう悪い癖なんだな。スピーカーが登場する以前に、司会者が名前も会社名も役職も紹介してるわけなんだから、わざわざ繰り返す必要はない。『鈴木でございます』って始まった時点で、聴衆は全員、興味を失う。あんたの名前なんて何度聞いてもおんなじだろ、って」